年上夫と死別、出仕拒否、陰口が飛び交う職場…“陰キャ”すぎた紫式部の知られざる処世術
会ったこともない清少納言もディスる理不尽
宮中もアウェイなら実家もアウェイ。世界が紫式部に向いていないのです。仕事面でも、官僚たちに「(清少納言がいた定子の後宮に比べて)彰子の後宮は面白くない」と評価されてしまいます。
男性たちは女房に事務的なやりとりだけではなく、色っぽい会話を期待しているのです。
弟に斎院付きの女房からの手紙を見せてもらった紫式部は、そこでも自分たちがバカにされていることを知ります。もっとも、紫式部にも言い分はあります。
▼『紫式部は今日も憂鬱 令和言葉で読む「紫式部日記」』より抜粋▼
私みたいに、埋もれ木を折ってさらに地中深く埋めたような引っ込み思案な性格でも、斎院様にお仕えしてたら、初対面の男性と和歌を詠み交わすことだってできると思うんだよね。あそこなら、軽薄な女だと評判を立てられることもないでしょ。そしたら私だって本気出して色っぽい和歌を詠みまくりますわ
職場のせいにしてる…! ここから周りの女房たちへのダメ出しが始まり、批判対象はなぜか会ったこともない清少納言の老後にまで飛び火します。そしてそのすぐあとで、人の老後を心配してる場合じゃない、自分の老後のほうがヤバいんだった、と反省するのが紫式部の愛すべきところです。
ギスギスした女房の世界でたどりついた処世術
紫式部の生きづらさは、きっと批評眼の鋭さも一因でしょう。他人に向ける厳しい目線が、自分に跳ね返ってきてしまうのです。
そんな自分の批評眼に疲れた紫式部は、「さまよう、すべて人はおいらかに、すこし心おきてのどかに」(見た目を感じよくして、ゆるふわにふるまって、少しのほほんとしてるくらいがいい)しておけばいい、という処世術にたどりつくのでした。
大作家なのにゆるふわOLになるのが一番、なんてせつない気持ちにもなりますが、ギスギスした女房の世界にいるからこそ、たどりついた境地なのかもしれません。
<構成/女子SPA!編集部> 1
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『紫式部は今日も憂鬱 令和言葉で読む「紫式部日記」』 紫式部の日記を現代のミドサーOL言葉で全訳し、かわいい猫のキャラクターが平安文化を解説してくれる!
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