NHK朝ドラ『ブギウギ』が“芸能界の希望”といえるワケ。草彅剛が示したもの
NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合、毎週月曜日~土曜日あさ8時放送)を見ていると、何とも愉快な気分になる。音楽の力とはやはり偉大なもの。
本作で趣里が演じる主人公・花田鈴子のモデルとなるのが、戦後のスター・笠置シヅ子。笠置をさらなるスター歌手に押上げたのが、作曲家・服部良一だった。
「イケメンと映画」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、服部良一をモデルとする羽鳥善一を演じる草彅剛に、“芸能の希望”を見出す。
「クリアアサヒが家で冷えてる」
今なら「クリアアサヒ」のコマーシャルでトータス松本が替え歌で歌うイメージだろうか。上戸彩がるんるんで家に帰ってきてクリアアサヒをグビグビ飲む。その姿に合わせて、「東京ブギウギ」のあの軽快なメロディ。
替え歌であることがむしろこの曲のメロディがぼくらになじんでいることを物語る。身も心も思わず、ウキウキしてくる。そんなブギウギのリズムの魔法。
まだロックンロールが誕生する前の1953年、戦後を代表する名ギタリスト角田孝によるエレクトリック・ギターのインスト録音版も有名だが、オリジナルはもちろん、角田と同時代に活躍した1948年(レコード発売)大ヒットの笠置シヅ子によるものだ。
1947年に大ヒットした「東京ブギウギ」は、ブギの女王による日本の準国歌のように今も昔も長い間親しまれている。アフリカ起源のブギウギのリズムが日本人を高揚させてきた事実は興味深い。
では、戦後を代表する笠置シヅ子の何がどうすごかったのか。同曲を歌っていた当時33歳だった笠置と同い年の趣里を主演に、笠置をモデルとする新朝ドラ『ブギウギ』の第1回冒頭のナレーションがほとんどすべてを説明してくれている。
「戦争の傷跡が生々しく、先の見えない世の中に、多くの日本人が不安を抱えていた頃、人々を楽しませ、励まし、生きていく活力を与えた一人の女性がいました」
このナレーションから、笠置が戦後を代表する意味がわかるだろう。「東京ブギウギ」が大ヒットする1948年は、終戦からわずか数年しか経っていない。いまだ戦時の惨状は当然あちこちに深く刻まれ、戦禍の記憶も生々しく残る。
にも関わらず、まるで戦禍が嘘であったかのように、この曲と笠置のあの恐ろしいくらいリズミカルな歌声が日本全土に活気をもたらし、活力を回復させたのである。
その意味でも「東京ブギウギ」は、戦後という時代を代表し、象徴するマジカルなナンバーなのだ。




