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宇垣美里が拍手した、男社会を生き抜く女性の一言とは?やつらをぎゃふんと言わせるために戦う女性たち

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
宇垣美里さん

撮影/中村和孝

 そんな宇垣さんが映画『私がやりました』についての思いを綴ります。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

●作品あらすじ:パリの大豪邸での有名映画プロデューサー殺人事件。容疑者の売れない新人女優マドレーヌは、「プロデューサーに襲われて自分の身を守るために撃った」と、親友である弁護士ポーリーヌが書いたカンペキなセリフを法廷で披露し、正当防衛で見事無罪を獲得。それどころか、悲劇のヒロインとして一躍人気スターの座へと駆け上がります。 豪邸に引っ越し、優雅な生活を始めるマドレーヌとポーリーヌでしたが、真犯人を名乗る女が現れ、マドレーヌたちが手にした富も名声も、自分のものだと言い出して…。 『8人の女たち』のフランソワ・オゾン監督が描く、クライムミステリーエンターテインメントを宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)

男社会で生き抜くために、やつらをぎゃふんと言わせるために

私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

 殺された有名プロデューサー、証拠もなく容疑を確信している判事に、男だらけの陪審員、私の人生がけっぷち。ならもう、開き直ってその罪、私のものにするしかなくない?
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

 売れない新人女優のマドレーヌは駆け出しの弁護士・ポーリーヌと同居しているが、2人の生活はカツカツ。  そんなある日、マドレーヌは高名な映画プロデューサー・モンフェランから愛人契約を要求され、何とか突き飛ばして帰宅したところ、なんと彼は何者かに射殺されたという。容疑者とされたマドレーヌはポーリーヌを弁護士に指名し、彼女と共に無罪判決を勝ち取るべく画策する。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

 舞台となる1935年のパリの美しい街並みに、クラシカルな音楽、それぞれの個性を表すようなレトロなファッションと画面いっぱいの洒落っ気にうっとり。ブラックユーモア満載に、もはや人が死んだとは思えない軽妙なテンポで話が進む。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

 自分の気持ちに正直なマドレーヌと策士なポーリーヌを始め、思い込みの激しい判事やボンクラな恋人、ピュアな若手記者など個性的なキャラクターたちは皆憎めない魅力があって、特に後半に登場する事件の鍵を握る落ち目の女優を演じたイザベル・ユペールの圧倒的な存在感といったら。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

正妻になるか愛人になるか、抑圧された女性たち

 ウィットに富んだ秀逸な台詞の応酬はケラケラ笑えるのに、その語り口の奥に見えてくるのは正妻になるか愛人になるかしか生きる道はなく、参政権も持てていない、その当時の女性たちの抑圧された現状だ。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

“今は1935年なのに、女性としてのキャリアや人生を自由に平等に手に入れることが何故許されないのか”、と法廷で訴えるマドレーヌの台詞に思わず拍手してしまったのは、2023年の今もなおそれは果たされていないから。監督フランソワ・オゾンの現代への痛烈な皮肉を感じた。
私がやりました

『私がやりました』© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

 男社会で生き抜くために、やつらをぎゃふんと言わせるために、手を携(たずさ)え戦うシスターフッド映画であり、そこはかとなく匂わされるクィアなロマンスは明言しきらないところに味がある。  エンドロールまで仕掛けがあって最後まで目が離せない。結局犯人は誰なんだろう? ま、誰でもいいか。みんな真実には興味がないみたいだし。 私がやりました』 監督・脚本:フランソワ・オゾン 出演:ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ 配給:ギャガ  © 2023 MANDARIN & COMPAGNIE – FOZ – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA – SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION 【他の記事を読む】⇒シリーズ「宇垣美里の沼落ちシネマ」の一覧はこちら <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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