夫が搬送された病院に駆けつけると知らない男が…その正体は?新しい家族像を示す注目ドラマ
もはや菅野美穂自身が、何よりドラマではないか。浜辺美波と共演した主演ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ、2021年)でも不思議な親子像を見事に体現した彼女の説得力は、他とは全然違う。
毎週木曜日よる9時に放送されている『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日)では、次々明かされる夫の秘密をすべて引き受けようとする主婦を演じている。これが驚くほどカッコいい。
「イケメンとドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、ひとりの主婦によって形成される“2023年仕様の家族像”を読み解く。
10月期のテレビドラマは、力作ぞろい。通年で見ても打率がかなり高いと思う。刑事物、サスペンス、青春ラブストーリーなどまんべんなく網羅される中、ひときわ異質なホームドラマがある。
あからさまに異質なのではなく、ふんわりした外皮に包み隠されている、むっつりな作品。菅野美穂主演の『ゆりあ先生の赤い糸』だ。
この人が出るとドラマ全体のトーンが、パッと明るく柔らかい雰囲気に包まれる。最初は何気ない日常から始まったとしても、彼女の演技がストーリーの核の部分にぐんぐん迫る力強さを感じさせる。
菅野のそうした表現力が推進力となって、本作のドラマは、心地よくも奇妙に進んでいく。
『ゆりあ先生の赤い糸』の主人公・伊沢ゆりあ(菅野美穂)は、ごく普通の専業主婦。
夫・伊沢吾良(田中哲司)は、酒場を渡り歩きながら連載を書く物書き。吾良の母・伊沢節子(三田佳子)と3人で特に波風立つこともなく暮らしている。
しかしある日、吾良が搬送されたと病院から連絡があり、駆けつける。命に別状はなかったものの、このまま目が覚めずに寝たきりになる可能性を医師から告げられる。
80代の義母は、認知症の兆候がある。周囲に頼りになる者は誰もいない。平穏をいきなりかき乱され、孤独感が押し寄せる。
さらに、吾良が搬送されたときに同行した謎の青年・箭内稟久(やない・りく/鈴鹿央士)が、衝撃の事実を明かす……。



