稟久が病院に面会にやってくる。吾良の状態を伝えると、「僕のせいなんです」と語りだす。「ホテル」、「僕が抱いてほしいって言って……」という予期せぬフレーズに、ゆりあは思わず口を歪ませる。
ここで第1話の名場面がくる。稟久を屋上へ連れ出したゆりあが、缶ジュースを手渡す。
吾良との恋愛関係について打ち明ける稟久を厳しい眼差しで見つめる。このとき、稟久はベンチに座り、ゆりあはやや離れた位置に立っている。この距離感が素晴らしい。
「どういうことですか?」とたずねるゆりあが近寄る。自分が悪かった云々と陰鬱に話す稟久を彼女はふてくされた表情で見ている。かと思えば、「ダメじゃないですか!」と語気を強める。そしてそのダメの理由が意外だった。
目の前にいる稟久は明らかに不倫相手。夫との恋愛関係を妻として認めるか、認めないかは別として、「話し合ったほうがいいです」と諭そうとする。普通こんなことが言えるだろうか。ゆりあの大胆不敵さがあっぱれな名場面だった。
とはいえ、彼女も人の子だ。緊急事態だというのに、まるで手を貸さない吾良の妹・伊沢志生里(宮澤エマ)やゆりあの苦難を笑う姉・泉川蘭(吉瀬美智子)の身勝手さにゆりあは、精神的に追い詰められていく。
吾良を施設に入れるか、それとも自宅で介護するのか。迷った末に、後者を選ぶ。昼はヘルパーがくるが、夜はひとりで世話をしなければならない。するとある晩、節子が激しく咳き込む。これは助けがいる状況。
でも頼りがいない。何もかも嫌になる。彼女は涙をたたえながら、仕方なく稟久に電話をして手伝いを頼む。
弱さと強さを同時に溢れさせながら表現する菅野の演技がしみる。菅野美穂自体がドラマそのもののような存在なのだ。