Lifestyle

トランス女性の日テレ映画プロデューサーが娘に「女の子はピンク」と言われ、伝えたこと

トランスジェンダーを取り巻く状況は変わっていく

――職場の仲間など、周りからの接し方の変化はありましたか?  いい意味でも悪い意味でもそれほど変わってないんじゃないですかね。たまに英語での会議があるのですが、私を「She」ではなく「He」と言う人はまだいますし。そう思わせているのは私の原因なのかなと思うこともありますが、嫌な気持ちにはなりますね。She、です、と指摘・修正したりもします。 ――今後、世間の持つトランスジェンダーへの認識は今と比べてどう変化すると考えていますか?  全体としては、いい方向に進むのではないでしょうか。そう思いたいです。「こんな姿でニュース番組に出るべきではない」といわれた10年前は、こうして取材を受けることなど考えられませんでした。つまり、この10年には明らかな変化があったということです。  さらに10年前の2004年には、性同一性障害特例法という法律ができました。定められた要件を満たした人は戸籍上の性別記載を変更できるという法律です。このことがきっかけで、徐々に世の中でトランスジェンダーの生き方が多様になり、社会的にも認知や理解のされ方が大きく広がった気がします。  そういう意味では、これから先もトランスジェンダーを取り巻く状況は変わってくるのかなと。

多様性を伝えるために子育てで意識していること

谷生俊美さん――社会の変化とともに、子どもに多様性をどう伝えるかを考える保護者は多いと思います。4歳になる娘さんの子育てで意識していることはありますか?  本当に難しいですよね。最近娘がプリンセスに興味があり、「ピンク可愛い」「女の子はピンク」とか言うんですよ。娘には男の子がピンクを好きになってもいいし、女の子がブルーを好きになってもいい。自分の好きな色をいいと思っていいと伝えているのですが、世の中のジェンダーバイアスによる影響を完全に拭うのは難しいです。  たとえば、保育園の先生やお友だちがピンクの洋服を着た女の子に「ピンク可愛いね」といえば、それを聞いた子どもはピンクの服を着たくなりますよね。このように世の中の価値観が再生産されていくんだな、というのを目の当たりにしています。 ――既存の価値観の再生産に飲み込まれないようにするためには?  本当に自分が好きなものを探してほしいと思います。例えば、アミューズメントパークで目にしたお城に惹かれたとしたら、そのモデルとなったお城に興味を持って、実際に見に行ってほしいなと。  娘はプリンセスに興味がありながらも、一番好きなのは恐竜で、その中でもプテラノドンとブラキオサウルスが一番なんですよ。おそらく映画「ドラえもん のび太の恐竜」をきっかけに恐竜に興味を示し、そこからカナダのドラマ「デイナの恐竜図鑑」に出てくる主人公である恐竜博士の少女を見て、女の子でも恐竜博士になれることを知ったのが大きいんだと思います。  なので、子どもにどういうコンテンツを見せるかはすごく大切だと思いますし、ずっと映像や映画に携わる仕事をしてきたからこそいいコンテンツを見せたいですね。
次のページ 
動画コンテンツや絵本でも伝えられることがある
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ