――シシガシラは敗者復活では歌のハゲネタで大ウケしましたが、決勝で別のしゃべくりのハゲネタで勝負をかけていましたね。
<近年のコンプライアンスを考えると、ハゲネタで決勝にいくのって相当難しいと思うんですよ。『人を傷つけるネタは……』と判断材料のひとつにされてしまうのは今の時代だと当然のこと。
予選も審査員制度である以上、ハゲでM-1の決勝にいくなら、もう敗者復活しかなかったんですよ。シシガシラは大衆の力で勝ち上がって、決勝の舞台でハゲネタを披露できたわけです>

©M-1グランプリ事務局
――しかし、あまり点数は伸びなかった。同じように伸び悩んだ組としては初出場のくらげも挙げられますね。
<今年はある程度の型があるフォーマット式漫才が軒並みやられてしまいましたね。罠を仕掛けた城(=フォーマット)が、大軍(=ボケ数の多いスタイル)に押しつぶされてしまった印象です>

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――モグライダーもフォーマット式漫才といえますよね。今年は錦野旦「空に太陽がある限り」、2年前には美川憲一「さそり座の女』」をネタにしています
<そうですね。今回、最初に芝さんが歌の見本を見せる時点で笑いがとれていたのは、以前のネタと大きく変わった面白いところだったと思います。
それでも、9番目のくらげとラストのモグライダーは順番に泣かされました。令和ロマンの手法でウケてしまったら、フォーマット式は厳しかったと思います。
そういう意味で、今回は本当に最初から令和ロマンの大会だったんでしょうね。同時に、近年のM-1の苦労人ブーム、地下芸人ブームがここで一旦(いったん)は落ち着いたような印象があります。またM-1のブームが変革の時期に入ったのではないでしょうか>
<文/もちづき千代子>
もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:
@kyan__tama