増える「推し活」トラブル、あなたは大丈夫? 精神科医が原因と対処法を分析
アイドルやキャラクター、作品コンテンツなどを応援する「推し活」。いまや3人に1人の割合で「推し」がおり、市場規模は8000億円超えを予測されるほどの大ブームとなっています。彼ら、彼女らは日常の4割を「推し活」に費やしているという調査結果も(※)。
もはや生活の一部となっている「推し活」。推しのおかげで豊かに過ごせている人がいる一方、「推し活」を巡るトラブルで病んでしまうケースも……。人生に潤いを与えるための行為で精神を蝕まれるのは本末転倒です。
では、充実した「推し活」ライフを送るにはどうすればよいのでしょうか。
『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』(大和書房)を著書に持つ精神科医の熊代亨氏に、「推し活」の楽しみ方やその注意点を伺いました。【前編】では「推し活」に依存するケースや、推しとの距離感についてお話しいただきます。
※出典:HAKUHODO & SIGNING「OSHINOMICS Report」(2024.02)より
――いま「推し活」が大ブームですね。この現象をどう捉えていらっしゃいますか。
熊代亨氏(以下、熊代):私は「推し活」が特別な活動だとは思っていないんです。“ファン活動”自体は、昔から存在していました。
違いを指摘するとすれば、かつてオタクの間で使われていた「萌え」は基本的に対象と愛好家との関係が「1対1」だった一方、現在の「推し活」は、みんなで共通の対象を一緒に応援するという点でしょうか。
――確かに、「萌え」時代に流行った“俺の嫁”という言葉は「推し活」であまり聞きません。
熊代:「推し活」の特徴のひとつは集団性ですね。プロ野球やサッカーなどは20世紀の頃からみんなで応援していましたが、「推し活」はそうした行為とも似ていると言えます。
ただ、「推し活」はCDをたくさん買うとか、同じ映画をリピートで何度も観に行くとかグッズをたくさん集めるとか、お金をかける行為が応援の中に組み込まれている面があるようにも感じています。
そしてもうひとつ、SNSの存在が前提であるというのも特徴でしょう。自分がいかにリピートし、熱心に応援しているかをSNSを通じて他者にアピールする。それも「推し活」では大きい要素になっていると思います。
――多くの人が「推し活」を楽しんでいる一方、まさに金銭面やSNS等でトラブルが発生する事例も見られますね。
熊代:「推し活の功罪」の「罪」については端的に依存しすぎてしまう、あるいは具体的にお金を使いすぎてしまう、ということがよく語られると思います。
ただ、そうした問題を抱える人がもし「推し活」をしていなかったら、お金は使っていなかったのか? 何かに依存することはなかったのか? と考えるとそうではない。
何かに依存しやすい状態にある人、お金をコントロールしづらい心理状態にある人が「推し活」にハマってしまった結果、アンコントロールな状態に陥ってしまうのではないでしょうか。
1対1の「萌え」、集団で応援する「推し活」
トラブルは「推し活」のせいではなく個人の問題
