――タトゥーをテーマに漫画を描くきっかけは何だったのでしょうか。
丸田:普段は日常生活や育児について漫画を描いているのですが、以前「顔のシミ取りレーザーをやってみた」という漫画を描いてインスタグラムに投稿したことがありました。レーザー治療の痛みを「揚げ物の油が跳ねて当たったときの痛みに似ている」と描いたら、「タトゥーを消したときの痛みに似てる」とコメントしてくれた人がいたんです。
そこから、「どうして消したんですか?」とメッセージをやり取りしたことで、この物語が生まれました。タトゥーを入れるまでの経緯にもドラマがあるけど、消す人にもいろいろなドラマがあるんだろうなと興味を持ったんです。モデルになった方からタトゥーに関する知識や体験談を聞かせてもらい、それを元に創作しました。
私が知る限りでは同じテーマを扱った漫画を読んだことがなかったので、「挑戦しがいがあるな」と思ったのもきっかけの一つです。
――最初にタトゥーの漫画を投稿したとき、どんな反響がありましたか?
丸田:印象的だったのは、男性読者が増えたことでした。パパ目線や、タトゥーについて意見をコメントしてくれる方が多かったです。主人公がパパだから見てくれたのかもしれないし、タトゥーというテーマは男女問わず興味を惹かれるのかもしれません。

※イメージです
――主人公のリョウは、タトゥーを入れるときはホテルや温泉施設に入れないなどのリスクを知りつつも、あまり気にしてはいなかったのでしょうか。
丸田:漫画を描くためにいろいろな人に、タトゥーを入れるきっかけを聞いてみたんですが、すごくリスクを考える人は最終的には踏み止まって入れないんですよ。「それでもやってみよう」という強い思いがある方が入れている印象がありました。
例に漏れず、この作品のモデルになった方もそうでした。モデルになった方は10代で入れたと言っていました。その後結婚して家族ができて、さまざまな問題が浮き彫りになってしまったという流れは漫画と同じです。
――冒頭では、主人公・リョウの息子が他の児童から「お前んちの父ちゃんって悪ぃーヤツなんだろ!」と心無い言葉をかけられ、「お父さんは悪い人なんかじゃない!」と立ち向かう場面もありましたね。リョウがタトゥーを入れたのは10代だったから、あまりリスクが気にならなかったというのもあるのでしょうか。
丸田:それもあるかもしれません。でも「若気の至り」で済ませたくはなかったので、リョウにはタトゥーを入れたいと考えるに至る思いがあったことを描きたいと思っていました。
――丸田さんが話を聞いたなかでは、タトゥーを入れる動機は人によって違いがあると感じましたか?
丸田:あくまでも私が感じたことなのですが、そもそも「タトゥー」と呼んでいる人と「入れ墨」と呼んでいる人で全然違うのかもなとすごく勉強になりました。
「入れ墨」と呼んでいる人は昔ながらの、何の職業に就いているかを表すためのものをイメージしていることが多くて、意味があって入れているものとして考えているようでした。