――リョウは、家族のためにタトゥーを消す選択をしますが、自分の誓いを込めたものを消すのはかなりつらいことだったのではないでしょうか。
丸田:つらかったんだろうなと想像しますが、男性はあまり「つらい」と言わない人が多いので、私の推測で描いています。モデルになった方も含めて、生きていくなかで結婚して家族ができて、自分の大切なものの優先順位が変わったと明確に分かったんだと思います。だから最後は悲しいとかつらいとか言わず、未練なく断ち切ったんじゃ無いかと思って描きました。
――モデルになった方はどの程度綺麗に消えたのでしょうか。
丸田:その方は、10代で入れたタトゥーを50代前後になってから消したそうです。美容クリニックで除去したと言っていました。傷跡を見せてもらったらアザのようにはなっていたけど、タトゥーが入っていたとは分からないようにはなっていました。
個人的には、技術が発達してタトゥーを簡単に綺麗に消すことができるようになったら、今よりはライトな感覚のものになっていくのかなと思います。
――物語のラストで、リョウの息子がある選択をしますが、どのような思いを込めて描いたのでしょうか。
丸田:自分の理想でもあるのですが、リョウとリツコという夫婦が自分の意見を押し付けない親であってほしいなと思って描きました。1人の人間だと認めて、息子の選択を「いいんじゃない」と受け入れる懐の深さが伝わるといいなと思っています。
――タトゥーに対する偏見などに関して、もう少し変わっていくといいなと思うことはありますか?
丸田:あまり偉そうなことは言えないのですが、あくまでも個人の自由に委ねられることだと思いますので、メディアなどであまり悪い印象操作はしないでほしいと思います。例えば、逮捕された人や、不倫がバレたミュージシャンの報道でタトゥーが目立つ写真が使われていることが多いなと感じるんです。そういうのを見て傷つく人もいるかもしれません。
既にタトゥーを入れたことで悩んでいる方は、人生を歩みながら考え方が変化するなかで、そのときに悔いのない選択をしていただくしかないのかなと思います。
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<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。