――現段階で再発防止のために行っていることを教えてください。
「『日刊BINKANランキング』コーナーにおいて、チェック体制の強化はすでに行われています。記事を扱う際に、いくつかの作業が平行して行われていた実態があるので、それを統合する形で不自然なところがないか、私や総合演出が責任者として確認することにしています。
かつ、現在は番組の中で実作業に関わっている人間とは別の第三者を置くことでミスを回避する業務フローに変更されています。記事を配信している媒体社さんの通達どおりに絵割りが行われているか、確認する人間が曜日担当ディレクターとは別に置かれています」

丹波忠寛氏含め4名のTOKYO MX社員が立ち会うなか取材を行った
――業務フロー以外の意識的な部分で変えていくべきだと感じていることは?
「オンエア中に気付かなかったのか、放送中に対応できなかったのかという部分に関わる話なのですが。やはり、今回の件で
そもそも放送内容に違和感があったとしても『声があげづらい』という環境自体が問題ではないかと思いました。
生放送の番組なので、放送直前や放送中にはもう対応できない、間に合わないという空気が存在していたのでしょう」
――生放送だから流れてしまったものは致し方ないという考えがあった、と。
「はい。
生放送の無意識の圧力、それがスタッフ全員の中にあったと思います。何か異変に気付いた時、ましてやそれが誰かを傷つけるような結果になる事態を招くものであれば尚更(なおさら)ですが、オンエア中の番組内で処理をしていかなくてはなりません。
この意識改革はすぐにでも行うべきと考えています。今回のことを経て何も感じられない人間は、番組制作には向いていないとも思います」
テレビの歴史的に“許されてきたもの”が許されなくなる現状への意識差
――最近ではテレビメディアの番組作りの姿勢を取りざたされることが増えてきているように思います。
「
テレビの歴史的に許されてきたものが許されなくなる現状は、私自身は理解しているつもりです。しかしスタッフ全員となると、そこに対する意識の差は確かにあると思います。まさに今回、こういった形で露呈してしまいましたが、
その差をどんどん埋めていかなければなりません。
局の内外を問わず番組制作に関わるすべての関係者に対して意識レベルを上げる対策をせねばならないと感じました。
将来に繋がるための教育を今後はしていくべきと考えています」

――私もライターである以上は発信者の一端です。今回のことは、改めて自身の書き手としての意識を戒(いまし)める機会にもなりました。その上で、多くのメディアの抑止力になればと、この取材をお願いしました。
「TOKYO MXは少人数制で手づくりな部分がある一方、副産物として視聴者との距離が近いという強みがありました。特に『5時に夢中!』は、視聴者に寄り添うことをモットーとしている番組であるにも関わらず、傷つく人が出てしまったことは非常に遺憾ではあります。
陳腐な言い方ですが、私たちもこの件は決して風化させてはいけないと感じたからこそ、インタビュー提案をお受けしました。これからも伝えていかないといけないし、残していかなければいけません。『5時に夢中!』の20年の歴史の中でも大きな出来事だったと思います」