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活動休止を経た27歳俳優が“エンタメ界の宝”である理由。過去作の監督も唸る才能とは

 伊藤健太郎は、日本のエンタメ界の宝ではないか。毎週木曜日深夜24時25分から放送されている『未恋〜かくれぼっちたち〜』(関西テレビ・フジテレビ)の彼を見て、改めてそう思った。
『未恋〜かくれぼっちたち〜』

株式会社フジテレビジョンのプレスリリースより

 物語のテイストは、どちらかというとライトなラブコメ作品。だが、あなどってはいけない。ふとした瞬間、伊藤健太郎は最良の魅力を放ち、作品全体の推進力となっているからだ。  イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、過去作を参照しながら、ほんとうに必要なことだけをやる伊藤健太郎の演技を解説する。

ラブコメ作品の作法だというなら……

 漫画編集者である高坂健斗(伊藤健太郎)は、編集部内で起きる問題を即座に解決するトラブル請負人である。突如、休載宣言をした人気漫画家・深田ゆず(弓木奈於)の自宅に様子をうかがいに行く役目も気軽に引き受ける。  マンションまで行くと、ちょうど外出しようとしたゆずとエントランスで鉢合わせる。健斗が編集者だとわかった途端に、逃走。待て、逃げろの追いかけっこ。ゆずがバランスを崩して、グラウンド近くの丘を転がる。着地した地点で、ひたすら押し問答を繰り広げる。  結果、健斗の自宅にゆずが居候することになる。連載は再開する。ずいぶんドタバタな展開。これだけではない。同居するふたりは、すぐに交際を始めるのである。さすがについてけない。でもこれが、男女が出会い頭からドタバタ動くラブコメ作品の作法だというなら、物語の無理な運びを納得するしかないのか?

第2話から急激に面白くなる理由

『未恋〜かくれぼっちたち〜』

株式会社フジテレビジョンのプレスリリースより

 いくら大好きな伊藤健太郎の主演ドラマとはいえ、『未恋〜かくれぼっちたち〜』(以下、『未恋』)第1話の突拍子ない場面の羅列を見せられると、くたびれる。ところが、第2話から急激に面白くなる。第1話のドタバタ展開に慣れてちょっとは耐性がついたからか。いやいや、違う。  その理由は、伊藤健太郎の魅力にぎゅぎゅっと濃縮される。交際開始から間もなく、帰宅した健斗とゆずがほっこりお茶を飲む場面。ゆずは「普通のデート」がしたいと健斗に頼む。  人気漫画家との交際が会社にばれるわけにはいない健斗が、やや間を置いてから、ゆずのほうを向く。短くすっきり鼻をすすりながら、口を左へむにゅっと動かして「行きましょ」という。このむにゅっの動作をする瞬間の伊藤健太郎が、力強くもつややか。最良の魅力を放っている。加えて色っぽい。このワンショット以降、伊藤の演技がぐんぐん推進力となり、作品全体を活気づけている。
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ほんとうに必要なことだけをやる演技
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