市原隼人『べらぼう』の検校、実は束縛キャラ?女児2人を両肩に乗せた姿に衝撃!鍛えた筋肉の強靭さが物語るものとは
あるとき、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の公式インスタグラムに掲載された鳥山検校役の市原隼人の写真は衝撃的だった。
なんて頼もしい市原隼人。まるで子どものヒーローだ。ただし、彼が演じている鳥山検校はこのインスタのように優しいヒーローキャラでは決してない。いや、当初、吉原にやって来たときは、視覚障害があるが、それを補って余りある鋭い洞察力を持ち、真実を見抜ける素敵な人に見えた。女郎たちにも人気があった。
ところが、瀬以(小芝風花)を身請けした途端、蔦重(横浜流星)との仲の良さに嫉妬を覚えるなど、束縛キャラの片鱗(へんりん)を見せ、いささか不穏な雰囲気になっているのだ。
演出の小谷高義はネットの記事で、「演出の深川(貴志)と視覚障害のある方々に取材されたり入念なアプローチをされていて、常に真摯な姿勢を崩されません。“目が見えないので基本的には人と目が合わない、だったら視線についてどう考えるのか”“この場面での視線はどこに合わせるのか”“ここは目が合う角度に顔を向けてもいいんじゃないか”といったディテールを細かく考えられている」と市原の役への取り組み方を絶賛している(シネマトゥデイ記事より)
市原隼人の大河ドラマ出演歴は、『おんな城主 直虎』(17年)、『鎌倉殿の13人』(22年)に次いで今回が3度目。回を追うごとに大河俳優としての存在感が増している気がする。
『直虎』で市原は、南渓和尚(小林薫)の一番弟子で僧侶の傑山役を演じた。たくましい体躯をした清々しいキャラの役づくりにあたって、禅を学んだそうだ。
『鎌倉殿の13人』のでは御家人・八田知家役。御家人仲間と群れることなく、粛々と土木の仕事を担当するキャラで、寡黙な分、着物を脱いだときの上半身の筋肉が饒舌(じょうぜつ)であった。
市原が、禿役の金子莉彩と吉田帆乃華のふたりを両肩に乗せて微笑んでいたのだ。そこには“「一緒に写真が撮りたい!」と頼んださくら&あやめに「じゃあ、抱っこしてあげるよ」と答え、軽々と抱えた力持ちの検校さん”とあった(2025年2月23日のインスタより)。
瞳は少し暗めのムーンストーンのような鳥山検校
そもそも、この時代(江戸中期)、盲人は朝廷や幕府から手厚い庇護を受けていたとドラマでは説明している。検校は盲人の役職の最高位で、鳥山は高利貸を営むことをゆるされていた。それゆえ裕福で、吉原で遊べるし、瀬以を身請けもできたのだ。つまり、清廉潔白な人物とは言えないのである。だからこそあのインスタが眩(まぶ)しく見える。 今後、瀬以との関係はどうなっていくのか気になる鳥山検校。瞳はまるで少し暗めのムーンストーンのようだ。勘が鋭く、空気で誰がそばにいるかわかるし、瀬以の脈拍から、彼女の言っていることがほんとか嘘か気づいてしまう。純粋過ぎるほど純粋ゆえの厳格さを市原隼人が全身から発してみせる。彼の鍛えられた筋肉の強靭さが、闇のなかで闘ってきた鳥山検校の複雑な精神性を物語るようだ。
視覚障害のある方々に取材し真摯に役に取り組む市原隼人
三谷作品では山本耕史がなぜか上半身をさらすことが時々あって、『鎌倉殿』の三浦義村の場面にもあった。市原は彼と並んで、2大筋肉キャラとして視聴者を楽しませた。この肉体派キャラ路線は、脚本家の三谷幸喜の想定外だったらしいが、市原の献身に打たれたのか、八田のラストの撮影に駆けつけ、本番前に髪を濡らすつくりをしたことが美談としてネットニュースで語られていた。
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