そんなある日、智史さんが久しぶりに仕事で東京に来ることになり、デートの約束をしました。
「智史に会えるのは嬉しいのですが、疲れきって目の下のクマが酷い自分の顔を鏡で見るとため息が出ました。そして翌日も6時半起きで仕事に行かないといけないと思うと落ち着かなくて気もそぞろでしたね」
そして数ヶ月ぶりに再会を果たした2人。
「智史は私を見るなりビックリして『
どうしたの、その手? そんな黒くなって……あんな真っ白だったのに。大丈夫? 何かあったの?』すごく心配そうな顔になって」

友理さんはあまりの余裕のなさに、5〜6月は地味に紫外線が強いこともすっかり忘れて、日焼け止めも塗らず必死に仕事を覚えていました。いつの間にかかなり日焼けをしてしまっていたことに、その時初めて気がついたんだそう。
「
智史の顔を見ていたら、そんないっぱいいっぱいな気持ちを自分だけで抱えているのが我慢できなくなってしまって。泣きながら今までの経緯を包み隠さずぶちまけてしまっていたんですよね」
そして最初は優しく話を聞いてくれた智史さんでしたが「でもね、
そんな自分の辛さを紛らわせるためにやけっぱちみたいな気持ちで仕事をするのは失礼だと思う。ちゃんと今後何年も続けていく覚悟を持って取り組んでいるの?」と最後に一喝されてしまいました。
「智史に叱られたのは、その時が初めてだったんですよね。
本当にぐうの音も出ないぐらいその通りで、私は自分のことしか考えられない未熟な人間なんだと心底反省しました。そしてちゃんと的確な指摘をしてくれた智史の気持ちが嬉しかったんですよね」
こうして初めてとことんまで話し合うことのできた2人は絆が深まり、結婚することになったそう。
「キリの良いところで検針員の仕事は辞めさせてもらい、彼の赴任先へ引っ越すことになりました。今では日焼けした手の甲を見るたびにくすぐったいような幸せな気持ちが湧いてくるんですよね」と微笑む友理さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop