過激なネタでも見せ方を工夫すれば受け入れてもらえるかもしれない
――「エガちゃんねる」の動画を観ていると広告審査が落ちるのを覚悟して過激な内容を配信している印象もありますが、その意図はどこからきていますか?
藤野:逆に言うと、広告審査が落ちるのさえ覚悟すれば、やりたいことができるのがYouTubeなんですよね。そもそもテレビではできないような「くだらないこと」「バカバカしいこと」をやりたくてYouTubeを始めたっていうところもありますし。
ただ、過激なネタをやると広告審査が落ちるだけではなく、チャンネル登録者数が減ったり、再生数も伸びなかったりするんですね。やはりあまり求められないのかもしれないですね(笑)そんな中、新しい発見があったのが『孤独のス●ベ』という動画。こちらは下ネタ全開で広告審査は当然落ちましたが、再生回数や登録者数は伸びたんですよ。
――それは意外な現象ですね!
藤野:本家『孤独のグルメ』に寄せたドラマ風の作りで作品性を高めたことによって、少し上品に見えたのが功を奏したのではないかと。もしかしたら見せ方を工夫すると下ネタも受け入れてもらえるのかなと考えています。その後にやった『食わず嫌い王決定戦』のパロディである『抜かず嫌い王決定戦』も広告審査は落ちましたが、再生回数とチャンネル登録者数は伸びました。しかも、コメント欄も荒れなかったんです。

画像:YouTube「エガちゃんねる EGA-CHANNEL」より
――『抜かず嫌い王決定戦』は「エガちゃんねる」で2025年最初に公開された動画ですね。
藤野:広告はダメでも再生回数とチャンネル登録者数が伸びるなら過激なネタもやる意味はあるのかなと思います。やっぱり我々にとって再生回数とチャンネル登録者数という目に見えてわかる数字の増加は江頭さんやブリーフ団、スタッフ全員にとって動画制作のモチベーションになりますから。
――動画につくコメントがモチベーションになったり、次の動画制作の参考になったりすることもありますか?
藤野:チャンネル運営においてコメントはある程度参考にしていますが、コメントだけに捉われないことも大事かと思っています。コメントの向こう側を見る、というか。以前、「江頭家の人々」というコント動画をやったんです。コアファンを中心にコメント欄は大絶賛でしたが、再生回数はあまり伸びませんでした。コアファンだけに目を向けて動画配信していたら、「エガちゃんねる」は終わるという危機感を抱きました。
――その危機感はどこから来ているのですか?
藤野:かつて、dTV(現・Lemino)で『がんばれ!エガちゃんピン』という番組をやっていました。その番組は「ザ・江頭2:50」という過激で下品な内容をやらせていただきまして、コアファンからは大絶賛をいただいていたのですが、最終的には打ち切りになりました。コアファンは喜んでもらえたのですが、多くの人には見てもらえなかったのが原因でした。番組が終わるというのは本当に悲しいことです。毎週やっていたロケもできない、会議でスタッフにも会えない、そこで働いていたみんなの給料もなくなってしまう……だから「エガちゃんねる」をスタートさせる時は、「このチャンネルは絶対に終わらせない」という覚悟で始めました。
【藤野義明】
演出家、ディレクター。1978年生まれ、神奈川県出身。明治大学卒業後、テレビ制作会社ケイマックスに所属。2011年に制作会社「ばんぺいゆ」を設立。登録者数465万人を誇る日本のトップYouTubeチャンネル「エガちゃんねる」をゼロから立ち上げる。「エガちゃんねる」ではブリーフ団Dとして番組を進行し、時には自ら出演することもある。近著に『
エガちゃんねる 10億回再生 下品の流儀』

<取材・文/ジャスト日本>