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海での事故が「午後2時」に最も多い理由。浮き輪をつけた子が危ない“知られざるリスク”

「うちの子は泳げるから」は危険。海とプールの大きな違い

――「個人要因」というのはどういったものでしょうか? 田村:個人要因で大きいのが、泳力不足、つまり泳ぐ力が足りないことによる溺水です。泳力不足と聞くと、「自分は泳げるから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。でも、ここで注意していただきたいのは、プールで泳げるのと海で泳げるのは全く別物ということです。  プールで25メートル泳げたとしても、海では水の抵抗や潮の流れ、足元の不安定さなど、自然環境ならではの要因で泳ぐ負担が大きくなり、「力不足」になってしまう人が多いんです。泳げるという過信や油断が事故につながるケースが多く見られます。 ――海では、「泳げるから大丈夫」ではないんですね。 田村:はい。実際、溺れている方の約半分が「プールで25m以上泳げる」と答えています。「泳げるから」と遠くまで行ってしまったり、無理をして溺水するパターンです。しかも、そのような方ほど、ライフジャケットを着用していない傾向にあります。  私たちが実際に救助にあたるのは、「泳げると思っていたのに、風に流されて陸に戻れなくなって、もがいている」「戻れなくなって溺水しかかっている」ケースがほとんどなんです。
「海のそなえ」水難事故に関する調査サマリー

参考:『「海のそなえ」水難事故に関する調査サマリー』日本財団 海と日本PROJECT

 海水浴場の利用者数にもよりますが、目立たないものも含めると、流されて溺れかけているケースが1日に数件以上、場合によってはもっと発生しています。 ――まさに、気のゆるみからきている事故ですね。 田村:子どもの場合は、「うちの子は泳げるから大丈夫」と親が目を離してしまうことが多いです。親が目を離している隙に遠くまで行ってしまい、溺れるケースです。泳げるから大丈夫と思っていても、実際は、泳力が足りずに溺れることが多いんです。プールと海では「泳げる」条件が全く違うことを、お子さんも親御さんも意識してほしいです。

海での事故が最も起きやすいのは「午後2時」

――泳力不足以外には、どのような個人的な要因がありますか? 田村:個人的要因としては「疲労」も挙げられます。海水浴場での救助要請が最も多くなるのは「午後2時前後」というデータもあります。これは午前中に海に到着し、昼食後に再び海に入る人が多いためだと考えられます。  早起きや長時間の運転による疲れに加え、昼食後の満腹感、さらには昼食時にとったアルコールの影響も関係する場合もあります。家族連れの場合、子どもを見守るべき親御さん自身が飲酒していると、事故への対応が遅れてしまう危険があります。
「海のそなえ」水難事故に関する調査サマリー

参考:『「海のそなえ」水難事故に関する調査サマリー』日本財団 海と日本PROJECT

――早起きして海に来る方は多いと思うので、疲労も重なり事故につながりやすいですね。
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男性の方が女性よりも溺れやすい理由
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