「お金を使うことに罪悪感があった」3児のシングルマザーの告白。落ち込み続ける日々を変えた“映画館での出会い”とは
東京で3人の子育てをしているシングルマザーで、『36歳、初めて推しができました。』(文芸社刊)の著者・凪倫子さん(@rinco_run2)。彼女は同作で昨年、エッセイコンテスト「第7回人生十人十色大賞」長編部門の最優秀賞を受賞しました。
作品には、「お金も時間もない、身近に頼れる親もいない」という状況のなかで、“推し”の存在に救われていった日々が、率直な言葉で綴られていました。そんな凪倫子さんに、シングルマザーの仕事や子育てのリアルについて取材しました。
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子どもを3人育てながら仕事もして、本まで出版している。誰が見ても立派で“すごい”と感じるはずですが、凪さん自身はこう言います。(※著書では子どもは1人の設定で書かれていますが、実際には3人います)
「自信はないし、仕事をバリバリやっている“キラキラシングルマザー”ではない。ずっと子どもに申し訳ないと思っていました」
彼女の言う「仕事バリバリ」は、年収300〜400万円台くらいのことだそうです。実際、凪さんは児童扶養手当などの支援を受けながら、暮らしをつないでいるのが実情です。
「バイタリティのあるシングルマザーは注目されやすいけど、実際は“キラキラしていない”シングルマザーの方が周りには多い。でも、助けてって言いにくいし、そういう存在があまり知られていないんです」
就職活動では「就労者を社会保険に入れたくなさそうな企業」も多く、シングルマザーには特有のハードルが立ちはだかります。子どもの病気や学校行事でたびたび休まざるを得ない現実が、月収10万円台の母子家庭を生み出しているのです。
「子どもに申し訳ない」——凪さんがそう感じる瞬間は、日常のあちこちにあります。
保育園で、両親が揃っている家庭を見たとき。子どもから「旅行に行きたい」と言われたけれど、人手もお金も時間もなく、応えることができなかったとき。
「テレビでお出かけ特集を見るだけで、子どもに申し訳なくなります。やってあげられることが本当に少ないんです」
SNSを見れば、コストコ、キャンプ、海外旅行、マイホーム購入など、他の家庭の華やかな投稿が目に入ってきます。それと比べて落ち込む自分がいる——それもまた現実でした。
外食もほとんどせず、お子さまランチは贅沢品。大盛りラーメンを頼んで子どもと分け合うような生活。
凪さんはずっと「お金を使うこと」や「一人の時間を持つこと」「次のパートナー探し」に罪悪感を抱えていたといいます。誘われた飲み会に顔を出すことも、「自分にはふさわしくない」と感じ断っていたそうです。
作品には、「お金も時間もない、身近に頼れる親もいない」という状況のなかで、“推し”の存在に救われていった日々が、率直な言葉で綴られていました。そんな凪倫子さんに、シングルマザーの仕事や子育てのリアルについて取材しました。
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ずっと子どもに申し訳ないと思っていた
両親がいる家庭と比べて落ち込み、お金を使うことに罪悪感
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