「子どもがかわいそう」「障害者が子どもを産むな」…37歳で想定外に妊娠した私が“批判的なコメント”に思うこと
37歳で想定外の妊娠をしたフリーライターの私。
長年、生理不順で3~4か月生理が来ないのは珍しくなかったこと、婦人科で不妊治療をしないと妊娠は難しいと言われていたこと、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性でセルフネグレクト癖があり自分の体の管理がおざなりになること、さらに算数障害(発達障害の一種で数字、計算に困難を抱える学習障害)で生理周期を把握していなかったことなどさまざまな要因が重なって、気付いたときにはすでに16週(妊娠5か月)に入っていた。
【連載を初めから読む】⇒連載「ADHDライター、突然ママになる」
さて、この連載も8回目となった。「16週まで妊娠に気づかないなんてPV数を稼ぎたいがための嘘ではないか」というコメントも多く、Xではまったく知らないママアカウントからブロックされていることにも気づいた(出産・育児情報ばかり見ていたらアルゴリズムでマタニティアカウント・ママアカウントが多く流れてくるようになった)。
しかし、それと同じくらい多いご意見が「障害者が子どもを産むな」「産まれてくる子どもがかわいそう」といったものだ。たしかに、セルフネグレクト癖があるため妊娠に気づくのが遅れたし、自らの世話すらできない人が産むのはどうかと自分でも思っていたので今まで積極的に子どもを持とうと思っていなかった。だからこのようなコメントが来るのは想定内ではあった。
この連載を始める前にXのアカウントで「太ったと思ってジムに通っていたら妊娠していた。16週に入っていてつわりもなくてもともと生理不順だったし気づかなかった」といった内容の妊娠報告をしたところ87万回ものインプレッションがあった。
多くはお祝いのコメントだったが、中には引用リポストで「つわりがなかったなんて過去のつわり中の私が見たら羨ましくて発狂しそう」「37歳でこんなに自分の体に無頓着だなんて……」「こういう人が未受診妊婦になるのか」といった少々炎上気味の反応も見られた。
私は予定外の自然妊娠だったが、妊娠して他の妊婦のSNSを見るようになってから、世の中には想像以上に不妊治療をしている人が多いことを知った。婦人科で子どもができにくい体だと言われたとき、不妊治療はお金もかかるしそれなら夫婦二人で毎週飲み歩いて暮らそうと楽観視していた。
けれど、世の中には赤ちゃんが欲しくて欲しくてたまらない人がいる、不妊治療に3桁万円の金額を費やす人や10年以上治療を続けている人もいると知り、軽い気持ちで「予定外の妊娠をした!」と発言したことが少し後ろめたくなってきた。
そんなとき、映画監督・作家の中村佑子さんと作家の石田月美さんによる出産に関するトークイベント「わたしが、わたしのからだを孤独にしないために」をオンラインで視聴した。そのトークの中で「産むことに対して理由が必要な世の中になっている」という話題が取り上げられた。
子どもが好きだから産む、子どもが可愛いから産むという人もいれば、私のように子どもができたから産む、という「産むための理由」が特にない人がいてもいいのではないだろうか。そもそも、子どもが欲しい理由なんて少子化貢献のためだけが目的という稀有な人以外はみんなエゴだ。
私は妊娠判明時、おろすという選択肢は頭に1mmもなかった。16週だったためすでに人間の形をしていて顔もできあがっており、ピクピクと動いていた。こんな小さな人間を殺せるわけがない。
「発達障害者が産むと子どもがかわいそう」と言われがちだが、健常者でも子どもを虐待したり毒親になったりしている人もいる。発達障害だから出産や育児が厳しい、子どもがかわいそうな目にあうとは限らない。
それに、知り合いでも発達障害当事者で出産・育児をしている人が多くいる。中には子どもの発達障害が判明して自分もそうかもしれないと思って医療機関を受診したところ、自分も発達障害だとわかったというケースも珍しくない。そういう場合、親子とも治療を受けたり子どもを療育に通わせたりしている。
予定外の妊娠に後ろめたさを感じる
「産むための理由」がない人がいてもいい
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