「短歌だからこそできる表現とは?」気鋭の作家と歌人が感じる“創作のコツ”
作家のくどうれいんさんと、歌人染野太朗さんによる恋の短歌集『恋のすべて』が、話題をよんでいます。
本書は、雑誌『Numero TOKYO』での短歌連載を書籍化したもの。書き下ろしとして即興で読み合った贈答歌と、一人30首ずつの連作も収録。「ふれる」「日曜日」「海」「キッチン」などのテーマから生まれた短歌は1首1首が恋愛映画のようで、今、恋をしている人もそうでない人も、恋からずいぶんと遠ざかった人も心がそよぐことまちがいなし!
『恋のすべて』は、誰しもの心の中にきっとある、恋の記憶に触れる歌が必ず見つかる一冊。くどうれいんさんと染野太朗さんに、珠玉の恋の歌の数々が生まれた経緯と短歌の楽しみ方を伺いました。
――短歌集『恋のすべて』は雑誌『Numero TOKYO』での連載がベースとなっています。連載はいかがでしたか?
くどう 作家の仕事は孤独な作業なので、誰かと一緒にやる幸せをかみしめていました。いただくテーマはどれも面白くて。「自分の短歌ってこんなニュアンスも出せるんだ」といった実験にもなってすごい楽しかったです。
染野:そもそも友人同士なので、できた歌は互いにLINEで送り合うのですが、締め切り当日にふたりで作るときもあって。なんでしょうね、一緒にやるからなのかすごく気持ちが盛り上がるんです。
くどう:だいたい太朗さんが先に送ってくれて、それを見て「そうきたか〜! く〜うまい!」と思いながら、負けじと書くみたいなことをしていました。
染野:創作物は共有していないけれど、創作の現場は共有していました。とくに、ルールはなく自由にやっていたので、お互いの短歌がつながるときもあったり。
くどう:太朗さんの作中の主人公のパートナーの立場で書いた歌も何首かあります。
染野:「クリスマス」のお題のとき、僕が「香水」という言葉を使ったら、れいんさんが、それを受けて、「ブラックティー・インク・無花果 失恋の前触れとして香水を買う」と詠んでくれて、香りが立ち上がるようにしてくれたのは印象深かったですね。
くどう:私がよく覚えているのは「嫉妬」の回です。まず太朗さんの「勝ちたくて壊す、壊せばまた負ける きみを溢れてコスモスが咲く」という歌を見て、もうこの歌があれば、もう私の5首なんかいらない!みたいな気持ちになってしまって。
でも、太朗さんが真っすぐに「嫉妬」を読まれたので、私も真正面から向き合わなきゃと5首を作ったんです。でもそのあと、北岡誠吾さんの誌面デザインが送られてきて見たら、青と緑の円が描かれていて。それがもう衝撃で。赤じゃない!って。
染野:れいんさんの中では、嫉妬は赤のイメージだった。
くどう:本当の嫉妬って赤くない? のかも……とか思えてきて、それで歌を変えたんです。それが、「赤いだけの嫉妬を過ぎて闇に眼が慣れた瞼のうらがわの紺」。グラフィックからこれほどの刺激を得られるというのは発見でしたし、太朗さんと私、デザイナーの北岡さん、そして『Numero TOKYO』の連載という、この座組だからこそ生まれた短歌でした。
創作の現場をふたりともにして
――短歌集『恋のすべて』は雑誌『Numero TOKYO』での連載がベースとなっています。連載はいかがでしたか?
くどう 作家の仕事は孤独な作業なので、誰かと一緒にやる幸せをかみしめていました。いただくテーマはどれも面白くて。「自分の短歌ってこんなニュアンスも出せるんだ」といった実験にもなってすごい楽しかったです。
染野:そもそも友人同士なので、できた歌は互いにLINEで送り合うのですが、締め切り当日にふたりで作るときもあって。なんでしょうね、一緒にやるからなのかすごく気持ちが盛り上がるんです。
くどう:だいたい太朗さんが先に送ってくれて、それを見て「そうきたか〜! く〜うまい!」と思いながら、負けじと書くみたいなことをしていました。
連載だから生まれた歌も
染野:れいんさんの中では、嫉妬は赤のイメージだった。
くどう:本当の嫉妬って赤くない? のかも……とか思えてきて、それで歌を変えたんです。それが、「赤いだけの嫉妬を過ぎて闇に眼が慣れた瞼のうらがわの紺」。グラフィックからこれほどの刺激を得られるというのは発見でしたし、太朗さんと私、デザイナーの北岡さん、そして『Numero TOKYO』の連載という、この座組だからこそ生まれた短歌でした。
1
2
〈くどうれいん〉トップ¥28,600 スカート¥43,000/ともにTEECHI(ティーチ info@teechi.jp) シューズ¥42,900/AKIKOAOKI(アキコアオキ TEL:03-5829-6188)



