『ぷらに』の運営を始めてから4年ほど。規模としてはささやかに見えるが、毎週10人程度が訪れるなかで、さまざまな若者と関わってきた。性別違和に悩む中学生や、離婚した父親から性的虐待を受けた女の子、いじめを機に中退した男子高校生など、時には過酷な思春期を過ごす若者にも出会った。

ぷらにInstagram(@pula2_lib)より
なかでも印象的だったのは、児童相談所を呼んだときだった。
「その当時、閉館時間になっても、帰宅を拒む中学1年生の女の子がいました。その子の腕には自傷行為(リストカット)の痕があり、話を聞けば『親から嫌われている』と一点張りで話すのみ。
基本的に、利用者の家庭事情には詮索しないようにしているものの、そのときは何時間も話した末に児童相談所の存在を教えたんです。動画で施設の様子を見せ、通報時は親にも連絡が行くことなどを教えたうえで、それでも本人が希望するので呼びました。
結局、その場では児相に行かず、ほどなくして女の子は来なくなりました。きっと母親に(ぷらにに行くことを)禁止されたのだと思います。そのときの対応が最善だったのかは今でも悩みますが、際どい状況下にある子どもが、他に頼れる場所がなく訪ねてくるのも事実です」

ぷらにInstagram(@pula2_lib)より
深刻な境遇を抱える利用者と接するなか、彼らの中で変化が芽生えた瞬間にも立ち会ってきた。
「特に男の子に多いのですが、最初は塞ぎ気味な状態でも、徐々に心を開いてくれるようになるんです。『趣味でDJを始めた』とか、『僕も何か手伝いたい』とか、『初めて性行為を経験した』とか、赤裸々に打ち明けてくれることもあります。普段は全然喋らなくても、要所要所で何かを報告してくれる変化を目の当たりにすると、彼らには家族や先生以外で気軽に話せる大人の存在が必要なのだと痛感します。
私が学生だった数十年前は、たまプラーザにも個人経営の喫茶店がいくつかあって、そこで年上のウェイトレスに世間話や相談事をしていたのを覚えています。あるいはご近所付き合いも残っていたので、それなりに開放的な空気感があったはずです。
それが昨今は、どこもチェーン店ばかりなうえに、スマホやSNSが浸透して、対面での関わりが薄れている。その皺寄せがウチに来ているのかなと感じます。だからこそ行政主導ではなく、民間で当事者の気持ちがわかる人が運営する場所が求められているのだと感じます」

本や漫画の他に、ボードゲームも