
Hulu『有閑倶楽部』より
一応注釈を付けておくと、平成ドラマの主演俳優として時代を駆け抜けていた『有閑倶楽部』(日本テレビ系、2007年)以来、18年ぶりに日本のドラマに出演したということになる。
2010年にKAT-TUNを脱退した赤西は近年、中国版SNSのWeiboでの影響力など、中華圏での人気がめざましい。
2017年には中国ドラマ『凌雲志〜愛と正義に生きた英雄〜』に出演。『西遊記』をモティーフにする同作の第1話冒頭、赤西演じる武神・楊岩が天帝に反旗を翻す。力業で相手の陣地を突破。
天帝に刃を向ける場面の赤西をカメラはハイアングルで捉える。天帝を仰ぎ見る表情が実に色っぽい。
上述したスリーカットのローアングルに対するこのハイアングル。まるでジャンルが異なる、2017年と2025年の中日ドラマのアングルが、こうして作品間で共鳴しながら、赤西の色気成分をとことん抽出している。
とはいえ、同作の赤西の声は、全編中国語で吹き替えられている。できることならば、赤西本人の声を聞きたいなと思ってしまうのだが、『匿名の恋人たち』でもちろんは正真正銘、赤西の声。
第2話で、ル・ソルベールを買収した双子製菓の御曹司・壮亮がハナを連れて取引先に謝りにいく場面がある。手を痛めた壮亮の代わりに寛が運転するために同行する。
道中、立ちよったサービスエリアの場面で赤西の美声に思わずときめく。軽食を買ってきた壮亮がもぐもぐしながら、ハナに「何か、好きなジャンルとかってあったりするんですか?」と聞く。
少しくぐもった感じの低音。あれ、赤西仁ってこんな声だった? でもこのくぐもった低音、そして印象的なもぐもぐとのマリアージュがメロ過ぎる。
少し声を発しただけで虜にさせてしまう。その美声でも視聴者を殺しにかかる。さらに第3話冒頭。
壮亮とハナのカウンセラーであるアイリーン(中村ゆり)を自宅に泊めて迎えた朝。ひらりとフレームインするタンクトップ赤西(やはりもぐもぐ!)。アイリーンは我に返り、慌てて部屋をでてタクシーに乗り込むのだが、そんな彼女に寛が「あの、すいません!」と大声で引き留める。
くぐもったぼそぼそ声から初めての大声。赤西仁、41歳の地味深く官能的な美声にただ身を委ねていたい。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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