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「悪気なく友達を傷つけてしまう」母親から教育虐待を受けた21歳女性が、成人して自覚した“後遺症”とは

親からの呪縛から逃れられると感じた瞬間

 これから社会と折り合っていくことへの不安も付きまとう。幸い症状は軽度だというが、それだけに周りから理解を得るのが難しく、気づかないうちに感情を爆発させては人間関係でトラブルを起こしているかもしれない。  あるいは結婚して、子どもが生まれたら、幼少期のことがフラッシュバックしてしまう懸念もある。「それこそ母が私にぶつけたように、私も娘が生まれたら同じことをしてしまうのでは」と一抹の不安を吐露する。  とはいえ、もちろん治療につながれた決断は大きい。治癒までの道のりは長いだろうが、自分を俯瞰できたことで前向きになれる瞬間もあった。 「最近、韓流アイドルにハマっているのですが、ライブを楽しんでいる時など回復傾向にあると実感するんです。 これまでは母からあらゆる選択に介入され、勉強や受験を強制され、スマホや娯楽も制限され続けてきました。それによって、心置きなく自分の好きなことを見つける機会がなかったんですね。だから『自分にも夢中になれるものがあった』と自覚した時は嬉しかったです。 一見、自分の好きなことに没頭するのは当たり前のように思えますが、私からすれば大きな一歩です。母の束縛から離れ、主体性を獲得しつつあるのだと。これからも自分が好きになれたことを、ひとつずつ再認識していくことが、前に進むきっかけになると考えています」

現在は就活中「自分の進みたい道を大事にしたい」

就活生の女性 現在は就活中のあかりさん。大学で学んだ社会学や、ゼミの実習で被災地のボランティアを経験したことを機に、インフラや建設系の職を志すようになる。 「それこそ就活っぽい言葉ですが、他人軸から自分軸になろうと意識しています。他人の視線を過度に気にせず、自分の進みたい道を大事にして、嫌なことは嫌と言う。そうした価値観を大事にしていきたいですね。 就活を始めた当初は、正直、親の顔がチラついていたんです。母は別の道に行ったほうが喜ぶのではないか、果たして母はこの選択を認めてくれるのか……と。大学以降、母からの干渉は収まっていたものの、どこかで意識してしまう自分がいました。 でも最近は、そうした強迫観念も薄れてきました。自分が選んだ選択の先に、私らしさが生まれて、結果的に虐待の後遺症も薄れていくのではないかと思っています」  取材を進めれば進めるほど、あかりさんは21歳ながら達観した印象が際立つ。  ただ、それでも虐待に起因する精神疾患が付きまとうと考えれば、それだけ虐待の影響は根深い。それでもあかりさんは、自身の歩幅で、過去の呪縛から離れようと前進する。 <取材・文/佐藤隼秀>
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