仲野:あと、グラフィティでスナップを撮るとき、モデルさんには必ず直立不動になってもらいます。ピースするのも抑えてもらうし、カメラと被写体との距離はどのスナップも一緒です。結構、撮影ルールがあるんです。

本当に全員が直立不動
――本当だ! どのモデルさんもピースとかしていないですね。
仲野:デザインっぽく見せないようにするというか、その人のそのままの状態を見てほしいと思っています。だから、うちのスナップはちょっとカタログっぽい感じがしますよね。
そもそも、立ち位置として『東京グラフィティ』はファッション誌ではありません。ファッション誌だとポージングをしたり目線を外したりしますが、ポージングで良い/悪いが決まるスナップは撮らないようにしています。そのままで撮ったとしても「いい!」と思える要素を撮る……というねらいがあります。そういう意味で、スナップは直立不動が基本です。
コロナ禍のストリートスナップは全員マスクをつけている
――『東京グラフィティ』がストリートスナップを撮る撮影場所は、原宿、秋葉原、巣鴨、新宿、浅草などすごく幅広いです。撮影場所はどんな基準で選んでいるのでしょうか?
仲野:歩いている人の雰囲気で、その街の実態が見えやすい場所ですね。そこにいることで許容されるファッションやカルチャーが見える街。
たとえば、昔の原宿だったらロリータやパンク、秋葉原だったらオタク、浅草だったらおじいちゃんおばあちゃんなど。一定数の人種とファッションの雰囲気が僕のなかの認識としてあるので、いろいろな街の撮影でそれらを記録に残していく感じです。
撮影場所は意識して毎回変えています。「駒沢公園でスケボーをしている女の子」というテーマを設定したストリートスナップ企画は、「駒沢に行ったらスケボーしてる女の子いるよね」「じゃあ、行って取材しよう」という話の流れで決まりました。今だったら「渋谷におしゃれな外国人、めっちゃ増えたよね」という話をよく聞くじゃないですか? 普通の人だと日常会話で終わる話ですが、僕らは「多いんだったら、本当に行って撮ってみようぜ」となります。そういうノリは、誌面のつくり方としてすごく大事にしています。
たぶん、これって20年後に見たらすごくおもしろいことになると思います。「なんで、渋谷で外国人を撮ったの?」「いや、あのときめっちゃ多かったんだよ」って。そんな雑誌になるように想定して取材しているところはありますね。
――資料としてもすごく価値のある雑誌ですね。
仲野:リアルを切り取るという意味では、2021年あたりに撮ったスナップがおもしろいです。見返すと、登場している人が全員マスクをしているんです。

2021年あたりは本当にこんな感じだった
グラフィティはドキュメンタリー的な要素を含む雑誌なので、こういうのもすごく大事にしていて。本当はマスクを取った状態で撮ったほうがいいのでしょうが、「コロナ禍はみんなマスクをしていた」という事実は絶対残しておくべきだと思い、マスクありのままで撮影しました。
たぶん、あの時期にマスクをつけたままファッションスナップを撮っていた雑誌は僕らだけだと思います。ファッション雑誌としてはあるまじき行為じゃないですか? でも、『東京グラフィティ』はファッション誌ではないし、どちらかというとリアル志向が強めなので、マスクありで写真撮った……というか、マスクを取るのをNGとしていました。