『東京グラフィティ』が雑誌として復活するのはいつか?
――復活した『東京グラフィティ』の今後の展開を教えてください。SNSは再始動しましたが、紙の本誌も復活しますか?
仲野:これは完全に内側の話なのですが、休刊したときに雑誌コードを切ってしまったんです。今、まさに相談している最中なのですが、雑誌コードを再び取るのはちょっと難しいかも……という状況でして(苦笑)。だから、書店販売はあっても、コンビニ流通はもうできないかなあと。
――コンビニの雑誌コーナーは縮小する一方ですが、今もコンビニ流通ができないと痛いのでしょうか?
仲野:そうですね、コンビニでの売り上げは結構多いです。ただ、今は昔みたいにコンビニで立ち読みができなくなってきていますよね。立ち読みができた頃、『東京グラフィティ』はコンビニ売り上げがすごく高かったんです。立ち読みする深夜族の人に刺さっていたらしくて(笑)。
――かつて、上下スウェットを着ながらグラフィティを立ち読みしていた人をよく見ました(笑)。
仲野:深夜、グラフィティを読んだらグッとくるという謎の効果があったようです(笑)。だから、僕らが今やらなきゃいけないことは雑誌コードを取り直すことですね。
ただ、休刊前もそうでしたが『東京グラフィティ』を出しても赤字になるのは揺るぎない確定事項です。だから、今のグラフィティの会社の規模感だと、営業案件でかなり収益を出してからでないと紙の本誌は出せないという状況です。
ただでさえ、今は紙の雑誌を出すのが難しい時代。創刊当時の『東京グラフィティ』は1か月に1回出ていて、コロナ以降は季刊になりました。今の僕の想定としては、『東京グラフィティ』を紙で年に1冊は出したい……ぐらいのペース感で考えています。2026年の秋~冬ぐらいに出せればうれしいな、という感じです。でも、そのためには広告のほうでお金を稼ぐ必要がありますね。
――『近大グラフィティ』的なお仕事があれば……ということですよね。
仲野:そうですね。だから、ちょっと特殊ですよね。黒字にならない雑誌を出したいから、ほかの広告案件をがんばる編集部って「働き方として合ってるのか?」という気持ちもあるんですけど(笑)。
あと、コロナ以降はリモートでできる企画を数多くやるようになり、その時期にアメリカやスコットランドなど海外のギャルの方をたくさん取材したんです。そうしたら「日本の雑誌から取材が来た!」と、海外のギャルたちがすごい喜んでくれて。だから、海外に向けたSNS展開にも力を入れていきたいと思っています。

外国のギャルに自宅内で自撮りしてもらった企画
『東京グラフィティ』の一番太い読者層は30~40代ですが、それより若い人たちが新規でグラフィティに興味を持ってくれるだろうか……と、僕はずっと考えていました。若い世代は動画コンテンツが主流で、雑誌は本当に好きな人が読むものになっていますからね。
一方、海外の人を取材したらすごく喜んでくれたのが編集者目線で僕はすごくうれしかった。「日本にはこういう雑誌があるみたいだよ」「え、こんなの知らなかった。おもしろい! 日本のことが知れる」と、数珠つなぎのように評判が広まっていって。
グラフィティの楽しみ方の一つに「いろいろな人の価値観を知れる」という要素があります。それを海外の人も享受できると知れたときは、目から鱗でした。だから今、SNSの投稿はタグを英語にしてるぐらいなんです(笑)。それぐらい、海外の人にグラフィティを見てほしいという気持ちはあります。
復活後の『東京グラフィティ』が今の時代に担う役割とは
――廃刊・休刊になった雑誌は「役割を終えた」と評価されることが多いです。しかし、『東京グラフィティ』の休刊はその類のものではなかった気がします。この時代に『東京グラフィティ』が担う役割はどんなものだと思いますか?
仲野:僕は、「肯定」だと思います。すべてを肯定すること。
SNS内で特定の人のファッションを馬鹿にしたり容姿をいじったり、今でもそういうやり取りをたまに見かけます。特に、オタクの人は「ダサい」「イケてない」「モテない」とSNSで虐げられやすい対象です。
でも、グラフィティのコンテンツはすべての人を肯定していく。オタクの方々がファッションスナップに載る機会って、うちの取材以外ではあまりないと思うんです。でも、グラフィティのファッションスナップに載ることで、その方々はすごく肯定されているはずです。だって、僕らはオタクの方々をすごくカッコいいと思いながら撮っているので。
――ああ、いいですね。
仲野:僕らはすごく「いい!」「イケてる!」と思いながら撮っています。秋葉原の街で自分の“好き”を引っ提げている時点で「あなたは素晴らしいよ」という気持ちがあります。好きな推しのアイドルをファッションとして昇華させている表現をめちゃくちゃカッコいいと思いながら撮っている。そんなふうに肯定していくことがすごく大事だなと思います。
だから、グラフィティが担っている役割は全肯定です。人を攻撃しないし、馬鹿にしない。取材した人を馬鹿にしないという姿勢を、すごく大事にしています。編集部は全員、グラフィティに載る人を「カッコいい」「イケてる」と思いながら撮る。それは大前提です。
――それはわかります。グラフィティを読むと、どんな属性の人も同じ扱いで並列で登場していますからね。
仲野:まさにそうですね。僕らは掲載する際の写真のサイズに関しても重視しています。たまに著名人の方が誌面に登場しますが、その際は優劣をつけないよう意識しています。普通の雑誌だったらおそらく、著名人の写真を大きくするはず。でも、僕らは一般の方々も著名な方々も全部、絶対に同じサイズにします。知名度を度外視する姿勢はすごく大事にしています。
たとえば、『東京グラフィティ』では政治家の方々をよく取材するんですね。
――鈴木宗男さんや山本太郎さん、茂木敏充さんなど錚々たる人たちが載っていますね。
仲野:でも、一般の方々と同じサイズで毎回登場していただいています。

一般の人も鈴木宗男も同じ大きさで登場する
そうやっていろいろな方々を公平に載せることで、すべての人を肯定する。そして、すべての人に対して「それでいいんだよ」「いろんな人がいていいよ」と伝えてあげる。そんな役割を担っているのかなと思います。
<取材・文・撮影/寺西ジャジューカ>