一方で、小説に関しては少し事情が違います。もともと私が小説好きだからかもしれませんが、小説を読むときにAIの要約を使うことはありません。
映画にも「あらすじ動画」がありますが、私はあまり見ない派。ストーリーの間も含めて、その時間ごと楽しみたいと思っているからです。
小説も、まったく同じ感覚で、作者が選んだ「てにをは」、行間の余白や空行。そうしたものを含めた空気感を読んで、物語に入っていきたい。だから、小説に関してはAIを通すことはしていません。
私にとって小説とは、もうひとつの世界に没入して、連れて行ってくれる体験。それこそが、小説の価値だと思っているからです。
ビジネス書において、私はまだ初心者です。
私の尊敬するマーケターの南房泰司さんはビジネス書の愛読家。その南房さんがビジネス書に関して、こんなことをおっしゃっていました。
「本当に優れたビジネス書には、そこに至るまでの著者の世界観とストーリーがある」
ビジネス書というと、つい“ノウハウのまとめ”のように思いがちですが、名著と呼ばれるものには、そこに至るまでの思考や物語がきちんと流れているのだそう。
だからこそ、南房さんは、本当にいいビジネス書は電子ではなくて、紙で読んでいるとも話していました。
「紙をめくる手触りや、本のつまり具合とかを含めて、著者の脳内世界を体験できる」
その言葉を聞いて、納得しました。
小説であってもビジネス書であっても、ただ情報を受け取るだけではなく、著者の思考の旅を一緒にたどる。
これもまた読書の価値のひとつなのだと感じました。

私自身も、最近はAIによる効率的な情報収集をしています。ビタミン剤のように必要な栄養素だけをインプットする毎日です。
AIの使用を否定するつもりはまったくありません。むしろ、毎日タスクに追われている身としては、本当に助けられている側面もあります。
ただ一方で、心を豊かにする“食事の時間”のような読書は、やはり手放したくありません。
もうすぐ日本に帰る予定があるので、書店に立ち寄って、小説を一冊買ってみようかなと思っています。久しぶりに小説をゆっくり読みたくなりました。
AIで効率よく摂取したい情報と、一文字ずつ時間をかけて味わいたい本。みなさんの中には、その境界線はありますか?
もし最近「これはよかった」という小説があれば、ぜひ教えてください。ミーハーな読者なので、みなさんがおすすめしてくださったら、きっと素直に手に取ってしまうと思います。
【Voicyで聴く】⇒
音声版「大木優紀の旅の恥はかき捨てて」
<文/大木優紀>
大木優紀
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『
NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母