「設備」と「人の優しさ」が揃って本当のバリアフリー
――2017年8月から2018年5月にかけて行われた1度目の世界一周旅行に挑戦した経緯を教えてください。
三代:当時は会社で毎日同じようなことを繰り返していました。心身ともに健康とは言えない生活で、将来への不安も大きかったです。そんななか「未来のことばかり考えず、これまでで一番楽しかったことをもう一度やろう」と考えたんです。
思い浮かんだのは、過去に行ったハワイやロサンゼルス、オーストラリアで感じた自由な旅の記憶でした。「また会社を辞めるのかよ」「いい加減に落ち着けよ」と思う自分もいましたし、周囲の批判への恐怖もありました。でも、「自分の心に従って生きよう」と初めて覚悟したんです。
あと、「車いすでも世界は旅できる」と伝えることを自分の“使命”と考えるようにもなっていました。知らないことへの不安を減らし、一歩踏み出す勇気を多くの人に持ってもらいたい。「誰かを後押ししたい」という思いが、1度目の世界一周の原動力でした。
――世界各地を見て、日本とバリアフリーの違いは感じましたか?
三代:日本は設備面で非常に優れていますが、海外では人の助け合いが自然に存在していると感じました。階段だらけの場所でも断られることはほとんどなかった。
設備だけでも足りないし、優しさだけでも足りません。両方がそろって、初めて本当のバリアフリーになるのだと思います。
――世界一周をして三代さんが学んだことはなんですか?
三代:海外を経験して学んだことは、「人は思っているより優しい」という事実です。
どれだけがんばっても、自分一人ではできないことがあります。しかし、時には人に頼り、お願いすることでそれらは実現できると知りました。世界にはバリアが多く存在しますが、人の力によって乗り越えることができます。
加えて、挑戦には恐怖や不安が必ず伴うことも学びました。だからこそ、これから挑戦したい人の気持ちに寄り添いたいと思うようになりました。
――三代さんの“車いすトラベラー”としての活動内容を教えてください。
三代:講演活動、SNSでの発信、旅行企画の監修、教育現場での講義、執筆などを行っています。
旅で得た経験を社会に還元し、障害や病気などのハンディキャップを持った人たちがさまざまなことに「挑戦するきっかけ」を届けることが現在の仕事です。
――今回、「自身の足での世界一周」という目標に挑戦しようと決意したきっかけを教えてください。

今回は、アメリカ→ペルー→ボリビア→フィンランド→エジプト→トルクメニスタン→マレーシアの道を行く
三代:大阪にある脊髄損傷者専門トレーニングジム「J-Workout」(大阪府大阪市)の方から「どうしてこんなに足が動くのに、活かさないんですか? ポテンシャルがありますよ!」と声をかけられたのがきっかけでした。その一言で、自分の可能性を信じてみようと思えたんです。
ジムで「歩けるようになったら何がしたいですか?」と問われ、改めて自分の人生を見つめ直しました。前回の世界一周では、段差や階段を理由に諦めた景色がたくさんありました。だから、今回の二周目は歩くことで見られる世界に挑戦したいと心に決めました。

マチュピチュを自分の足で踏みしめる
車いすだけでなく“歩ける自分”で世界を旅するために、リハビリとトレーニングには本気で取り組んだ。出発してからは7ヶ国を回り、医療従事者やトレーナーにそれぞれのエリアでご協力をいただきました。J-Workoutのトレーナーとはそのうちの5ヶ国ほどを共にしました。