――今回の旅で新たに学んだこと、感じたことはありますか?
三代:旅が終わってシンプルに思ったのは、人生には「余白」があるということです。
今までの自分の人生を振り返ると、28歳で世界一周を遂げ、そこから車椅子トラベラーとして非常に充実した人生を送ってきました。
そして今回、世界二周目というチャレンジに立ち向かうことができた。そのきっかけは、J-Workoutのスタッフさんから言われた「足、動くじゃないですか。なぜ、それを活かさないんですか?」という一言です。完全に充実しきっていると思っていた僕の人生に、まだ“成長”という余白が残っていたことに気付かされた。
――なるほど、そういう意味の「余白」ですか。
三代:僕は車いすでも十分幸せだと思っていました。でも、「歩く」という選択肢ができたことにより272段をのぼることができた。帰国後も飲食店に行く際、「3~4段の階段だったら歩いて行くわ」と躊躇しない自分がいたんです。
車椅子で19年間生活してきて、自分でも行きやすい場所が僕の視野のすべてだった。でも、数歩でも歩けるようになったことで世界は倍に広がった感じがします。37年の人生、いろいろ楽しんだと思っていました。でも、車いすを理由に諦めていた世界がこれからは普通に楽しめるのかと思ったら、その一言の大切さは非常に重要だと思いましたね。
――その一言も大切だし、一言の重要性に気づく感性も素晴らしいと思います。今まで満足していたけれど、「より素晴らしい世界があるのか」という気づきにつながったのですね。
三代:これは自分では気づけるものではなく、脊髄損傷のプロが言ってくれたおかげだと思います。だから、病院に勤める理学療法士、作業療法士の人たちは「退院後、もっと人生が楽しくなる」と希望を届けられる存在になってほしい。
僕のように治らない障害の場合、セラピストの人たちは動かない体で家で暮らせるようにすることをゴールに据えがちです。でも、自宅に帰るのがゴールではなく、「車いすでも体が動かなくも、工夫や環境次第でいろいろ楽しめることが世の中にはある」と希望を与えてあげてほしいんです。
僕はこの旅で、人生はたった一つのきっかけで変われるという事実に衝撃を受けました。今、37歳ですが、人は変わろうと思えばいつからでも変われる。それが、この旅で感じたことでした。今くすぶっていて「人生、どうでもいいか」と自暴自棄になっている人たちがこの話を知って「自分も半歩でいいから踏み出してみるか」と心が動いてくれたならばうれしいです。
<取材・文/寺西ジャジューカ>
寺西ジャジューカ
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス、ドラマ評。『証言UWF 最後の真実』『証言UWF 完全崩壊の真実』『証言「橋本真也34歳 小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言1・4 橋本vs.小川 20年目の真実 』『証言 長州力 「革命戦士」の虚と実』(すべて宝島社)で執筆。