貯金も生活費も0円。明日からどうする!?【シングルマザー、家を買う/9章・後編】
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いつか息子が医大に行きたいといったらどうしよう。娘がウィーンにピアノを習いに行きたいと言ったらどうしよう。
……そんときはそんときだ。それにたぶん、そんな日は来ない。
私は悩みぬいた挙句、家も子どものためと勝手な解釈をし、勝手に自分のOKを出した。
このとき、本当の意味で、貯金はほぼ0円。生活費もほぼ0円。次のギャラが入るまで一体どうしよう。そんなカツカツで家って買うものなのか…!?
でも、もう後戻りはできない。
次の日、保育園に子どもを迎えに行くと同じ団地のママ友に会った。そのママ友はとってもサバッとしていて、旦那さまをしっかり支えるデキるママだ。これまではあまりお金の話はしたことがない。でも、あまりに切羽詰っていた私は、彼女に愚痴をこぼしたのだ。
「家を買ったんだけどさ、初期費用で貯金が0になっちゃってさ…」
するとママ友はビクともせずこう返したのだ。
「そんなんよくあるよくある! うちなんか、昨日お金がなさすぎて泣いちゃった! あははは!」
え? 泣いたの? お金がなさすぎて? 母子家庭でもないのに?
そんな心理を見抜いたのか、彼女は続ける。
「ほんと、知らぬ間になくなっちゃうよねぇ~。なのに旦那が車買い替えようっていうのよ! あははは、どうしよう~! 無理無理~! しかもね、うちの旦那、ベンチャーだから今月の給料が来月払われるんだって~! ほんと、どうしよう! あはは」
めちゃくちゃ笑ってる。さすがの私も“お金がなさすぎて”という理由では泣いたことがない。しかもそれに追い討ちをかけて車が欲しいなんていってくる旦那もいない。さらに、予定していた給料も入らない…。私なら絶望しかない。
それなのに、めちゃくちゃ笑ってる。
私、こんな嫁が欲しい。こんなに逆境を笑い飛ばせる嫁が欲しい。再婚するならこの人しかいない。そう思った。私がもらうのは婿だけど。
そんな彼女のおかげで、私が悩んでいることなんて、すごくちっぽけな感じがした。そして、その後彼女は「大丈夫よ、なんとかなるもんよ」と声をかけてくれた。
その夜、スッカラカンになった銀行口座を覗くと、なぜか16万ほどのお金が入っていた。よく見ると“ジドウテアテ”と書いてある。あぁ、母子手当てか!
母子手当ては、当時の私の収入が少なかったため、月に4万円ほどもらえることになっていた。さらに、毎月支払われるわけではなく、数ヶ月に1度まとめて支払われるからこそ、高額なのだ。
そのとき、友達の「なんとかなるもんよ」という言葉を思い出した。
本当だ、明日からの食費はどうしようと悩んでいた私でも、なんとかなったのだ。これなら次のギャラが入るまで、なんとかやっていける。早速その16万から娘と息子の口座に1万円ずつ貯金して、気を持ち直した。
少しずつ、少しずつ。
そう、人生、なんとかなると思えば、なんとかなるのだ。
<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
「お金なさすぎて泣いちゃった」と笑うママ友に感謝
なんとかなると思えば、なんとかなる
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
『シングルマザー、家を買う』 年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える! シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。 |