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ヤバさを追究(?)した芸人・永野がたどり着いた究極のネタ「クマさん応援大会」

 昨年1月、「2014年ブレイク必至!? カルト芸人・永野とは?」という記事を書いた。あれから1年4か月。永野はブレイクした。「テレビ向きじゃない」と散々言われていたが、いまや日常的にテレビに出ている。PON!、シューイチ、スッキリ!など、朝の情報番組に出ても、さほど違和感がない。 カルト芸人・永野 そして先日、5月23日、24日の2日間、「永野の業界関係者向けライブ」が新宿ロフトプラスワンにて開催された。といっても、チケットは一般発売されたので、(「業界関係者向けライブ」という名の通常のライブなんだろうな)と思ったら、客席の半分以上はほんとに業界関係者だった。永野曰く、「狙いを定めたライブへようこそ」――。  1日目は「永野の業界関係者向けライブ ~月の宴~」。“バーストナイト”をコンセプトに、過激なネタ30以上をひたすら披露。  2日目は、「同 ~はなの舞~」と称した“メルヘンナイト”。ポップな歌ネタを中心にする。……と言っていたのが、さらに過激なネタの数々。ヤバすぎてYouTubeから削除されたネタ、放送禁止用語を使った新ネタ。「業界関係者に見てもらって、仕事を増やしたい」という言葉はなんだったのか……。お蔵入りかと思われた“カルト芸人”っぷりに、テレビ関係者も昔からのファンも新規のファンもどっかんどっかんウケていた。 ⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=274937  今回のライブで一番の盛り上がりを見せたのが、「クマさん応援大会」。永野がクマのお面をかぶり、幼稚園のお遊戯会のように楽しそうに踊る。それに合わせて、観客が「クーマーさん! クーマーさん!」と、ゆっくりとした手拍子で声援を送る。すると、永野がパタッと倒れる。
クマさん応援大会

クマさん応援大会

 観客は「クマさん死なないでー!」「クマさーん!」「いやー!」と、クマさんを応援する。するとクマさんは立ち上がり、また楽しそうに踊る。そしてまた倒れる。観客は「クマさん死なないでー!」「クマさーん!」と声援を送る。クマさんは立ち上がって踊る。そしてまた、というのがエンドレスに続く……のみ。  ヤバい新興宗教の集会のようだった。永野が教祖に見えた。観客全員、気が触れたかのように笑い転げた。あの一体感はなんだったのだろう。ライブ終わりに、クマさん応援大会の意味はなんなのか、本人に聞いた。「意味はないです。意味とか求めないでください」……意味なく、ただクマさんを応援するというヤバさ。メッセージ的なものとか?「メッセージもないです」……メッセージもなく、ただ「クマさんのことを応援してください」と呼びかけるヤバさ。  過激さを追究すると、人はシンプルになる。Coccoはある日突然、歌をやめて沖縄の海でゴミ拾いを始めた。ジョン・レノンは平和に目覚めた。永野もきっと、テレビに出るようになって大人の汚さに嫌気がさし、お遊戯会にたどり着いたのだろう。……というのは完全な憶測だが、しかし“売れて変わってしまった自分”へのメッセージはあるような気がした。ライブの最後、後輩芸人・パーティ内山が登場し、永野にダメ出しをするという一幕があったのだ。「永野さんはテレビに出て丸くなった」――。
後輩芸人・パーティ内山(左)

後輩芸人・パーティ内山(左)

「あれは永野さんご自身へのメッセージではないですか? 丸くなったことへの戒めとか」と聞いたところ、「とくに考えてないです。でも言われてみれば、そういうのが出てるのかもしれない。でも自分としては全くないです」とあっさり言われた。本当に全くないのだろう。  ライブに来ていた某テレビ局のプロデューサーに「クマさんを番組でやりましょう」と売り込んでいた。帰り際、「僕に意味を求めないでくださいよ。意味なんてないんですよ」とダメ押しされた。そうかもしれない。お笑いに意味を求めてはいけないのかもしれない。ネタの意味なんかより、ただゲラゲラ腹を抱えて笑えることのほうがずっと大事だ。……というメッセージは、きっとあったと思う。 <取材・文・撮影/尾崎ムギ子>
尾崎ムギ子
1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。「web Sportiva」などでプロレスの記事を中心に執筆。著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』。Twitter:@ozaki_mugiko
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