おおた「二つ目は、『やってもやっても妻に認められない』という悩みですね。一般的な家庭では、妻のほうが育児時間は長いですから、夫が多少やっても『私は毎日やってるんだから、そんなのやって当然』となる。
夫としてはがんばって育児をしても妻にとっては当たり前、さらに言えば出来ていない部分にばかり目がいってダメ出しされてしまうのです」
――まさに、イクメンであればあるほど夫が追いつめられていくわけですね。
おおた「そこで夫が『俺だってがんばっている』と言ってしまえば、妻も『私だって毎日必死に育児をしている』と主張して、〝どちらが大変か競争〟という不毛な争いになります。
最悪なのは、“どちらが大変か”の白黒をつけるために、疲れていることを誇張して言ったり、必要以上に忙しいフリをするという、謎の争いに発展することです。こんなことで勝った負けたとケンカしても、何の解決の糸口もありません」
――我が家も、その争いを何度もしたことがあります…。
おおた「さらに3つ目は夫婦間での意見の相違です。どの子供服を買うかというレベルから、中学受験はするのか、塾はSAPIXか日能研か、といったレベルまで様々です。夫がイクメンで正論を言いたがるタイプだと、ますます険悪になりますね」
――いずれも育児というよりも夫婦の問題ですね。
おおた「そうなんです。育児をするうえで夫婦関係はとても大切です。そこで大事なのは、夫婦が父親であること・母親であることに甘んじてはいけないということです」
――というのは?
おおた「夫婦間に絆や信頼関係がなければ、協力して育児はできませんよね。信頼関係がないから、ぶつかったときにどちらが正しいか、どちらが大変かという争いになってしまうのです。
妻と夫が単なる同居人になってしまうとダメ。母親である前に妻であること、父親である前に夫であることを意識する必要があるんです」
――なるほど…。そうは言っても子育て真っ最中で時間も心の余裕もないなかで、夫婦の絆を深めるのはなかなか難しいような。
おおた「僕は相談者に対して、意識して夫婦の関係性を作り直す方法を提案しているんです」
その具体的な解決策とは…。出産・育児を経て「パワハラ嫁」として夫との関係がややギクシャク(?)しているライターが、次回、まさに当事者としてアドバイスを聞きます。
【おおたとしまさ氏プロフィール】
1973年生まれ。現在14歳、11歳の2児の父。育児・教育ジャーナリスト、心理カウンセラーとして活動。著書は『
ルポ父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』『
大学付属校という選択』など多数
<TEXT/瀧戸詠未>