東京から関西に移り、弟に支えてもらった時期もありました。少しずつ日常の生活を取り戻していく状態でしたが人に頼ってばかりでは生きていけません。日本で再出発を果たせたのは帰国して約8ヵ月後のことでした。 　最初の仕事はタイのバンコクにあるホテルオークラで行われるウェディングショー。ニューヨークからの作品を発表するだけではなく、ショー全体の演出まで依頼されて忙しい毎日がまたスタートです。タイと日本を行き来すると、私は仕事をしないといけないと、ほんの少し実感したものです。まだまだ回復はしてはいませんでしたが、とにかくやり終えました。 　2015年には大阪でメイクスクール「AKEMI　S. MILLER　BEAUTY STUDIO」を開校してニューヨーク時代と同様“フェイスデザイン”のクラスを行っています。世界中からの生徒の募集もしています。中国や東南アジアからも生徒がやって来ます。 　目標ですか？ まだありません。言うならば“無”の心境。仕事ばかりしていた私の人生で、今、何のために生きていくのかを模索中です。 　私はまた、スタートラインに戻りました。 ―アケミS.ミラーさんインタビュー　Vol.4― 【アケミS.ミラー】 兵庫県生まれ。京都できものを学び、79年から東京で“曽根あけみ”として活動。 1989年にニューヨークに渡り、AKEMI STUDIOを設立。ニューヨークコレクションのデザイナーとして活躍。米国人の夫の死をきっかけに2013年に日本に帰国し、大阪市でフェイスデザインのメイクスクール「AKEMI　S. MILLER　BEAUTY STUDIO」を開校。 ＜TEXT、現在の撮影／studio KEIF・加藤慶＞