Gourmet
Lifestyle

栃木の“レモン牛乳”、消えて復活した懐かしの味【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」】

「関東・栃木レモン」として復活

 よって、皆なくなる前に金を出して買っていたかどうかは定かではないが「なくさないでくれ」という声だけは相次いだ。  それを受け「栃木乳業」が「関東牛乳」からレモン牛乳の製造方法を引き継ぎ「関東・栃木レモン」として復活したのである。  ちなみに引継は無償で行われたそうだ。復活を願った人間が復活後買ったかどうかはわからないが、少なくとも「みなに愛されたレモン牛乳をなくしたくない」という一心で復活がなされたのは確かである。  なぜ「牛乳」を取ってしまったかというと、某食品偽装事件から、100%でないものは牛乳という名前で売れなくなってしまったからだそうだ。どんな事件にも思わぬ余波というものがある。  こうして復活した「関東・栃木レモン」はその後テレビにも紹介されるなどして、名物の一つとしての地位を築いているようだ。  続ければ、いつか認められる、の好例だが、続けるにはまず需要や資本が必要なのでそこが一番難しい。しかも少子化のため、子ども向け商品でも子供だけに訴求していては立ち行かなくなったのだ。女児・男児向けアニメにも関わらず、あからさまに大人を狙った演出に苦言を呈する人もいるが、金を出すのは常に大人だ、そうしないとまず「続ける」ことすらできないのである。

酸味はない。だってレモン果汁が入っていないから

 さて「関東・栃木レモン」の味だが、「甘い牛乳」というテーマで作られただけあって、甘い。レモンと謳ってはいるが、酸味はない。そもそもレモン果汁は入っておらず、いちご牛乳レモン版という感じだ。  飲みやすく、我が家にも結構な量が送られてきたが、毎日1本飲んで、すでになくなってしまった。昔の子どもも好きだっただろうが、今の子どもだって好きそうな味である。  そして、昔の子ども、現中年も喜ぶ味である。 <文・イラスト/カレー沢薫> 【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】 1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』『ねこもくわない』『ナゾ野菜』、コラム集に『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『ブスの本懐』などがある
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ