●連載「ファッション誌が答えてくれない相談」47 by小林直子●
新しいコートを買おうと思っています。コートは一生ものですか? またいつ買えばいいですか?
まず「コートは一生ものか」というご質問についてです。
若い人とそうでない人とでは、「一生」の残り時間に差が出てきますが、1度買えば死ぬまでもう買わなくていいか、ぐらいの意味でしょう。

「一生もの」で誰しも思い浮かべるバーバリー。写真はステンカラーコート 画像:WEAR
服には物理的な側面と、デザイン的な側面とがあります。
物理的な側面から言えば、残念ながら、コートは一生ものとは言えません。
着るたびに、どこかがすれたり、ほつれたり、色あせたり、虫に食われたりと、モノとしての劣化は避けられません。
ですからコートが長もちするかどうかは、何年たったかではなく、何回着たかによります。冬のあいだ毎日のように着たならば、早いうちにだめになってしまうでしょう。

定番、ロンドントラディショナルのダッフルコート 画像:WEAR
一方、コートのデザイン的な側面はどうか。ファッション関連の展示のある美術館には、歴史に名を残すデザイナーたちのコートが数多く展示されています。
コートに限らず、洋服のなかにはデザイン的にすたれない、美術館に入るような作品がいくつかあります。それらはデザイン、パターン、素材、縫製、すべてにおいて優れているので、何年たっても素敵に見えますし、お望みであれば、着用することも可能です。
そういったコートは、何年たっても素敵に見えて、デザイン的に一生ものであると言えるでしょう。
しかし飾っておくのではなく、
日常的に着るつもりであるのならば、一生もののコートはないと言えるでしょう。
どんなにシンプルで、定番のように見えるコートでも毎年どこかしらのマイナーチェンジが施されています。肩幅、身幅、着丈、袖幅、アームホール、肩パッドの厚さなど、去年と今年のものが同じということはありません。

スコットランド発祥の老舗、マッキントッシュのトレンチコート 画像:WEAR
例外的に、ダッフルコートやピーコート、フィールドコートの専門ブランドが作るコートは、ほとんどモデルチェンジがありません。ただし、着るこちら側のほうが、今は大き目(小さ目)がいいとか、着丈は長い(短い)ほうがいいなど、変わっていきますので、同じものがずっと今の一番いい感じに見えるとは限りません。
コートが何年ぐらいもつかという目安を言うなら、デザイン的に普遍性があるもので10年弱、そうでないものは5年弱ぐらいがいいところではないでしょうか。しかし、前述したように、あまり着ないのであれば、デザイン的に普遍性があるものは10年以上もたせることは可能です。