「なくなった」
これは衝撃的事実である。
この菊水堂のポテトチップのパッケージはほぼ透明だ。よって、チップスがぎっしり入っているのが見える。しかも市販のチップスより一回り以上袋が大きい。
正直それが2袋送られてきたのを見たときは、いい意味ではなく「うわっ」と思った。
チップスは子供の時から今でも大好きだが、何せ年を取った。今でも1袋は食べられるが2袋はきついし、1袋でも調子が悪いと胃がもたれる。
菊水堂は「できたて」にこだわっているため、一部店舗を除き、通信販売のみで文字通りできたてのポテトチップスを送ってきてくれる。
しかし、迫力のあるチップス2袋見たとき「悪いがその熱意に応えられそうにない」と思った。
「長期戦」になるだろうと。
それがまさかの短期決戦である。小学生3人がかりとかならわかるが、兵が中年一人にもかかわらずだ。
ちなみに2袋目は次の日全部食べた。奇しくも会社の熱意に完全に答えた形である。
さらにすごいのは戦死者を出さなかったという点である。ここで戦死するのは主に胃腸だが、二日連続の出兵にも関わらず無事の帰還である。
ここで確信した。
「このチップスには長年のヘビーユーザーが多くいる」と。
菊水堂がポテトチップスを作りはじめた当時は「子どもが喜ぶもの」というコンセプトがあったらしいが、子どもはもちろん「中年の胃も喜ぶもの」にもなっている。
<文・イラスト/カレー沢薫>
【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】
1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『
クレムリン』で漫画家デビュー。自身2作目となる『
アンモラル・カスタマイズZ』は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。主な漫画作品に、『
ヤリへん』『
やわらかい。課長 起田総司』『
ねこもくわない』『
ナゾ野菜』、コラム集に『
負ける技術』『
もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』『
ブスの本懐』などがある