「兄の子供たちばかり可愛がっていましたね」 　病弱だった父親が脳梗塞で倒れると、裕美子さんは、子育てのかたわらデザイナーの仕事を減らして、実家に帰省して父を看病します。その時も母親は孫にあたる裕美子さんの子を抱こうとしません。 「兄も兄嫁も何もしてくれないので、私が父が入院している病院にいかざるをえません。しかも入院費が足りないと私にお金をせびってきて。疲れました」 　さらに、裕美子さんの息子のために、父親が貯金してくれていた口座を母親が勝手に解約。「看病で疲れたから」と父親の介護を付添人に任せて、温泉旅行を楽しむなど、やりたい放題だったといいます。 　そんな母親を見て、裕美子さんはとうとう「実家に帰らない」と決心し、兄嫁に数万円を渡して、父親の様子を随時知らせてもらうことにしたのです。 「母親との決別を決めてから、元の職場から大口の仕事が舞い込みました。業務委託で子育てと両立しています」と、裕美子さん。 　その後、友達の紹介で診察してもらった心理カウンセラーから驚くべきことを指摘されたそうです。 「お母さんはあなたが羨ましくて嫉妬しているんです。ちゃんと仕事をして自立し、子供も授かったあなたが幸せだから」 　母親なら娘の幸せを望むはずなのにと複雑な心境の裕美子さんでしたが、嫉妬心という指摘には驚愕しながらも、納得したそうです。 　母娘関係には、同性ならではの難しさがあるのかもしれません。 ―シリーズ“モンスターペアレント” vol.4― ＜TEXT／夏目かをる　イラスト／あらいぴろよ＞