「平日の朝8時まで帰って来ないっておかしいでしょ! って思った私はブチギレ状態に。『
浮気でしょ? 今すぐここでパンツ脱げ!』って迫ったんです。当然、彼は拒否ですよね。そのまま、お風呂に駆け込んでいったんです」

「やっぱり、やましいことがあるからパンツを脱げなかったんだわ」と確信したマリさんは、すぐに他の証拠を探します。他の荷物と一緒に放置されたツヨシのスマホは、彼が直前まで触っていたらしく、珍しく画面ロックが外れた状態でした。マリさんは、これはチャンス! と
ツヨシのスマホをチェックしてしまいました。
「彼のLINEには、
浮気相手との待ち合わせからどんなエッチをしたのか、その感想まで赤裸々に書いてありました。もう、見た瞬間、全身に鳥肌が立つのがわかりましたね」
LINEの画面をスマホで撮影したあと、自分のスマホの録音アプリをセット。マリさんは動揺しながらも、これから自分がやろうとしていることを、短い時間の中で何度も脳内シミュレーションしました。
コーヒーを淹れて、風呂上がりのツヨシに声をかけ「さっきは取り乱してごめん、コーヒー飲んでね」とソファに座らせました。次の瞬間、今度はマリさんが豹変。冷ややかな目で浮気を問いただしていったところ、あっさり「
そうだよ、浮気してました」と認めたそうです。
「最初は完全に開き直ってましたよ。やったものはしょうがないだろって。でも私が
『浮気相手と話をするまで絶対、会社行かせない。会社に嫌がらせFAXとかメール送る』って、淡々と言ったら、ちょっとビビったみたいで、浮気相手に電話してくれました」

この通話は浮気の証拠をつかむために録音されています…(写真はイメージです)
もちろん、浮気相手との電話もマリさんは録音。相手の女性は「婚約者がいる相手と知っていてエッチした」とあっさり白状したそうです。今までみたことがないほど激怒するマリさんを前に、ツヨシはやっと事の重大さに気付いたのか、突然態度を改めます。
平謝りに転じるだけでなく、動転していたのか「
もうマリには一生隠し事なんかしない! 俺の全部を知ってくれ! 俺には――」と、さらなる爆弾発言を繰り出しました。
「
借金がある」
「は!?」
「彼は、家にある家具などの高価なものは全て、ローンで買ったものだと突然言い出したんです。会社の業績が悪く、最近はボーナスも出ていなかったそうで、
ストレスから身の丈に合わないヤケ買いをし始めたらクセになったとか。まさに泥船ですよね…もう唖然とするしかありませんでした」
好みだと思っていたファッションも、幸せな生活の始まりと思っていたモデルルームのような部屋も、すべて借金の上に作られていたと知ったマリさん。うっすらと心にあった婚約解消を、この段階で100%決意したそうです。
「浮気の証拠も押さえたから、これで堂々と婚約解消できるって思ったので、彼を解放。出社した彼を見送ったあと、
便利屋に電話して、荷物を全部実家へ運び出しました。有休が取れて良かったです」
帰宅後、マリさんがいなくなったことに気付いたツヨシ。捨てられたことが許せないのか、突然ストーカー化してしまいます。
「毎日の電話、メールに、会社や実家での待ち伏せ。『マリのことわかるのは俺しかいない!』とか言い出すわ、メールがどんどんポエム調になっていくわで…別れてよかったなと。でも通勤時間に電車で待ち伏せされてたときは、さすがに恐怖を感じましたね」
最終的には、引っ越しと転職でツヨシを振り切ったそうです。「引っ越し代はかかったけど、人生を棒に振る前に気づけて良かったです。
浮気相手に、金一封を送りたいぐらい!」
結婚願望が上がっているときのスピード婚は、本当に危険ですね! よく吟味しましょう。
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自分史上最悪の恋愛 Vol.7―
<TEXT/ミノシマタカコ イラスト/やましたともこ>