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卵子の老化は防げる?男性不妊って何?知らないと怖い不妊の基礎

不妊の約半数は、男性側にも原因がある

Q:男性側にある不妊の原因は何でしょうか? 不妊治療黒田:不妊の原因は女性側にあると思われがちですが、実は約半数は男性側の精子にも原因があります。  男性側にみられる不妊(男性不妊)の約90%は、原因不明の精子形成障害(造精機能障害)です。精子形成障害とは、精巣(睾丸)で精子を造る能力が障害されることで、産生される精子量(精子数)が減るだけでなく、多様な精子品質(機能)の異常を伴います。  でも、その原因が明らかになることが少ないので、今日でも精子形成障害を治す根本的な治療薬は開発されていません。そのため、ホルモン療法の効果は低く、男性不妊治療はいまだ苦戦しています。  この点が、女性不妊治療――有効なホルモン療法が確立されて飛躍的に治療成績が向上している――とは大きく異なるところです。  実は、泌尿器科領域のみならず、婦人科領域でも最近まで男性側の不妊原因、特に「精子に関する研究」にはほぼノータッチでした。その結果、ヒトの精子に関する研究(臨床精子学)が出遅れてしまっているのが現状です。この出遅れが、後に解説しますが、現在の不妊治療の色々な問題につながってしまったのです。 「妊活の先には不妊がある」こともありますので、妊娠を考えているカップルが、不妊治療に関する基本的な正しい知識を持つことは、とても重要なことなのです。生まれてくる子どもの命に対する責任があるのですから…。 =====================  今では20代から不妊治療クリニックにかかる人も増えています。そしてSNSで詳細に報告する例も見受けられます。  カフェにでも行くかのように「治療に行ってきます!」と書き込む人も少なくありません。テレビで大々的に不妊治療の特集が組まれると、「自分たちも不妊治療を行わなければ子どもを授かることができないのか」と、夫婦揃って不妊クリニックの門を叩いてしまうようです。  その前に一度、夫婦で生活習慣を見直すなど個人でできることを試みるとともに、不妊治療に関する正しい知識を身につけることもとても大事なことではないでしょうか。  次回は具体的な不妊治療の方法についてお伝えします。 【黒田優佳子(くろだゆかこ)医師】 医学博士。慶應義塾大学医学部、同産婦人科学教室大学院卒業。ヒト精子研究の第一人者。東京大学医科学研究所研究員、女性初の慶大産婦人科医長を経て、2000年 自身の基礎研究に基づいた最先端の知識と技術を駆使した不妊治療を実現するため、独立。現在、黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長 <TEXT/ジャーナリスト・草薙厚子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
草薙厚子
ジャーナリスト。元法務省東京少年鑑別所法務教官。著書に『ドキュメント 発達障害と少年犯罪 』『本当は怖い不妊治療』『となりの少年少女A』など多数
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