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朝ドラ『半分、青い。』で人気再燃、くらもちふさこのマンガの素晴らしさ

くらもち作品は「ああ、これわかる!」の連続

 くらもちふさこさんは、一貫して日本を舞台にした、現実社会の物語を描き続けています。
くらもち本~くらもちふさこ公式アンソロジーコミック~

『くらもち本~くらもちふさこ公式アンソロジーコミック~』(2018年1月)

 ストーリーの中では、初めてブラジャーをつけるときのとまどいといった、10代の女子たちが出会う悩みやコンプレックスが事細かに表現されているんです。「ああ、これわかる!」「私だけじゃないんだ!」って、誰もが共感するのではないでしょうか、世代を超えてもきっと。  そうして、ドラマでも語られていたように、小さなことに気付く繊細な心が養われていくはずです。  登場する男子もかっこいい。ウィットに富んでいて頭の回転が速く、ポンポンと交わす会話がめちゃくちゃ面白いんです。女にもモテモテで、適当な女と遊んだりするので、主人公はたいていライバルにヤキモキさせられます。  そして、鎖骨や指の関節、手首のでっぱり、肘の骨っぽさなど、男性らしいシャープな表現がすごくかっこいい。女子のパーツ萌えはくらもち先生から始まったのではないでしょうか。
『くらもちふさこ デビュー45周年記念 ときめきの最前線 』(文藝別冊) ムック 、 2017年4月

『くらもちふさこ デビュー45周年記念 ときめきの最前線 』(文藝別冊) ムック 、 2017年4月

少女マンガに与えた影響は絶大

 そう、くらもちさんは後輩に与えた影響も大きかった。  クール男子の元祖はくらもち先生が描いたと言われています。その他にも初恋の男子と再会したら彼が劇的に変わってたなんていう少女マンガは現代にもありますし、離婚届に一文字ずつ名前を書いていくなんて展開も見たことがありますし、兄弟での恋愛もよくあります。 「あ、これ、くらもち先生の作品と同じシーンだ」なんてのにけっこう出くわします。  私は「男性は少女マンガを読むべきだ」と普段から言い続けていますが、それは、女がどんなことを考えているか、そして人の言葉の裏にはどんな気持ちが隠れているのか、その機微がわかるようになるからです。くらもちさんの作品は、その代表です。  ドラマでは、くらもちふさこさんをモデルとした秋風羽織(豊川悦司)が、あの作曲家・佐村河内守に似ていると話題ですね。男性向けマンガには女性作家がたくさんいますが、女性向けマンガ界に男性作家は数名です。女の心の機微は男性には描けないんですね。秋風羽織は現実にはあり得ないと思います。  ドラマで取り上げられる前述の3作品は、どれも2巻~5巻と中編ですから読みやすいですし、どれも楽しめます。なにより、大きく話題に上ることの少なかった少女マンガ界の大御所が、こうして世間で注目されることがとても嬉しいです。 <TEXT/和久井香菜子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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