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「水ぼうそうキャンディー」で我が子にわざと感染させる…ワクチン反対派の母親たち

ワクチン賛成派と反対派の間にある深い溝

 ワクチン賛成派と反対派の溝は深い。フィラデルフィア小児病院 感染症部門長兼ワクチン教育センター長のポール・オフィットは、ワクチン接種の重要性を正面きって語ってきた小児科医だ。研究チームの一員としてロタウイルスのワクチンの開発にも携わった。  あるとき彼は、「何種類のワクチンなら多すぎるのか」と問われた際、思い切って、一人の小児は理論的に何十万種類のワクチンを許容でき、一度に百種類のワクチンを接種しても大丈夫だと答えた。 一人の小児は理論的に何十万種類のワクチンを許容できる 彼はいま、十万種類という数字を出したことに後悔している。その数字が不正確だったからではなく、「気が狂っている」と思われてしまったからだ。インターネット上では「悪魔の使い」あるいは「ドクター・金儲け」と呼ばれ、罵詈雑言を浴びせられている。「おまえの首を締めあげて殺してやる」といった脅迫メールも届くという。  オフィットは最近インフルエンザで入院した小児患者二人についても語ってくれた。二人ともインフルエンザ・ワクチンを受けておらず、最終的に人工肺装置につながれた。一人は生き延びたがもう一人は亡くなった。オフィットは次のように言っていた。 「ワクチンを不安に思う気持ちは理解できますし、尊重するべきです。ただワクチン接種をしないという決断は尊重できません。負わなくてもいいはずのリスクを負うからです」  ワクチンや手洗いで防げない病気はこれからもつねに存在し続け、それが未知のものを恐れる気持ちを助長するだろう。それでもワクチン接種には予防医学を超えた、社会をよりよいものにする効果があると私は信じている。 【ユーラ・ビス プロフィール】 ノンフィクション作家、エッセイスト、批評家。『Notes from No Man’s Land』で全米批評家協会賞を受賞。「ビリーバー」「ハーパーズ・マガシン」などにエッセイを寄稿。 <文/ユーラ・ビス 訳/矢野真千子 編集/森聖児>
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