質問コーナーでは、ホストで売れていないと電話が止まったり健康保険が払えないという格差の話題も出ました。獅龍さんは次のように言います。
「言ってる意味すごくわかります。正直この業界にきれいごとはないです。踏まれていく人間が多い業界です。踏まれても立ち上がれない人間はそれまでだと思います。お金と引き換えに、気力、体力を削らないとならない業界です。仕事が終わって帰って早く寝て、何も考えずに出勤して、
口先だけで病んだっていう人間は正直いなくなればいいと思います」
強い眼差しで語りました。地道な営業など人一倍の努力で勝ち残ってきた自負を感じさせます。まさに気合いです。

眼光するどい獅龍さんと穏やかな表情を崩さない葵さん
葵さんの話も印象的でした。
「お客さんに高級ソープ嬢がいました。体を売ってまでなんで、と言う人がいましたが、自分が納得してお金を使う分には問題ないと思う。第三者がかわいそうと言うのは失礼です。
女の子は泣いているからといって悲しいとは限らない。女の子は不思議です。泣きながら3本目のシャンパンを入れている時の自分が一番かわいいとか思ってたりしますから……」
百戦錬磨のホストを持ってしても女心は不可解だそうです。その女性へのわからなさが畏敬の念になって、ていねいな接客につながるのかもしれません。
獅龍さんの最後の言葉は万能感にあふれていました。
「言いたいことは、自分が主人公なんで。自分がルフィーなんで」
「ONE PIECE」ちゃんと読んでないですが、十分伝わるものがありました。
歌舞伎町の帰り道、「ホストどうですか~」と声をかけられましたが、一流のホストを間近で見てしまったので、もう他のホストのキャッチなどは耳に入りませんでした。
<文&イラスト/辛酸なめ子>
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【辛酸なめ子 プロフィール】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著者は『
辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『
辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『
女子校育ち』(筑摩書房)など多数。