便利カラーのグレーを女性が着ても、“おじさんスーツ”ぽくならない2つの法則
【モードをリアルに着る! Vol.44/小林直子】
今年50周年を迎えるラルフローレンのスタイルは、過去のルックのどれを見ても、クラッシックで端正です。
モードの最先端とか、飛び抜けた目新しさはありませんが、このいつでも変わらぬ端正さはなかなかほかのブランドには見られないことであり、移り変わりの激しいモード界にとって貴重な存在だと言えるでしょう。
ラルフローレンについていけば間違いなく、昔撮った写真を後から見返して大笑いしたり、どうしてそんな服を選んだのか、理解に苦しむようなことにはなりません。
そんなラルフローレンのグレーの扱い方の提案は、グレーのシルクのシャツに、セットアップではないものの、同じ明るさのグレーの織り模様の入ったパンツ、そして足元はシルバーのピンヒール、それにラルフローレンならではのネイビーのブレザーです。
ラルフローレンがそのルックを一般的で平凡なグレーのスタイルと差をつけるために付け足したのはシルクの艶、そしてシルバーのメタリックな輝きです。また同じ艶でもシャツとパンツで素材の織り方を変化させ、ルック全体に抑揚をつけています。
そこにネイビーのブレザーを羽織ることによって、シャツの裾をパンツの外へ振らせたカジュアルなスタイルを、オフィスでも通用するようなきちんとしたスタイルへと格上げしています。
艶のないグレーはまるでコンクリートのようで、みずみずしさがなく、生き生きとした感じがありません。そしてそんな艶がないグレーだけで全身を包むと、それは艶がない肌と同様で、とても老けて見えます。「おじさんのスーツみたい」と言われて嬉しい感じがしないのは、そこに若さが感じられないからです。
シルクの艶、そしてシルバーの靴の輝き、最後にグレーよりはよほど若い印象を与えるネイビーのジャケットを持ってくることで、グレーの独特の老けた感じを払(ふっ)しょくしているのがラルフローレンのスタイルです。
ラルフローレンにならって、私たちがグレーのスタイルを作るときには以下の点に注意すればいいでしょう。
まずは、全身のどこかに艶、あるいは輝きをプラスすること。
洗いざらした艶のないシャツではなく、生地自体に光沢があるシルクや、または高級なコットンを選んだり、ウールだったら、やはりこれも艶のあるカシミアや、非常に極細なメリノウールなどを選ぶこと。
そしてシルバーの靴は無理だとしても、時計やアクセサリーを使ってメタリックな輝きを付け足すこと。また、これはメタリックではありませんが、パールの輝きもグレーにはとても似合いますから、パールのジュエリーを持っている場合はそれを使うのもいいでしょう。
黒、ネイビーと並ぶ、オフィスウエアにおける基本的な色といったらグレーでしょう。グレー好きを公言している方もたくさんいますし、実際にたくさんの働く女性がグレーのアイテムを所持し、日常的に着ています。 またグレーは秋冬に特に多くあらわれる色でもあります。なぜかグレーは春夏には少なく、秋を過ぎるころには一気に多く出回るのも特徴です。 真冬ともなれば、明度の高い明るいグレーから暗いチャコールグレーまでのグレーの多彩なバリエーションが楽しめますし、グレーは白、黒と同様に彩度がないニュートラルカラ―と呼ばれる色で、彩度が高い色とも低い色とも合わせられる便利な色でもあります。 しかしそんなグレーにも欠点があります。彩度がないだけではなく、際立って明るい白、暗い黒とも違って、明度も中間に位置するため、ぼんやりした雰囲気に見えたり、無難にまとまりがちな点、そして何より男性がスーツとしてよく選ぶ色であることから、いわゆる「おじさんのスーツ」と同じ印象になってしまうという点です。 そんなグレーですから、とびきりおしゃれには見せたいときにはどこかしら工夫が必要となります。そんな工夫のしどころをラルフローレンの2018年プレフォールのコレクションから学びましょう。
いつでも変わらぬ端正さ、ラルフローレン
シルクの艶とメタリックの輝きで差をつけたラルフローレン
艶、あるいは輝きをプラスすること
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