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『まんぷく』の“シリアス+笑い”は秀逸。桐谷健太のちゃっかりキャラも笑える

 ドラマウォッチャーの田幸和歌子です。  朝ドラ=NHK連続テレビ小説『まんぷく』は、第4週(10月22~27日)に入り、ますます好調。脚本、演出、キャスティング等、今クールドラマのなかで(現時点では)突出しているように思います。  特に見事なのは、シリアスと笑いのバランスの良さです。
 インスタントラーメンを発明した日清食品の創業者夫婦をモデルに、福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)の奮闘を描くこのドラマ。第3週(10月15日~20日)で2人は結婚しましたが、太平洋戦争はますます激しくなり、萬平が憲兵に連行されて拷問を受けるなど、シリアスな展開に…。ですが、シリアスの間に挟み込む「笑い」がとにかく秀逸なのです。

朝ドラにありがちな「笑いの取り方」との違いは

 半年間毎日放送される朝ドラでは、大きな時代のうねりを描くことが多く、特に王道物語では、戦争などの困難を乗り越える展開が必要となってきます。  まして実在のモデルがいる作品の場合は、避けて通れないシリアスな展開がそれなりにあるもの。  物語全体としては絶対に必要なパートなのですが、「朝からそんな重たく暗いものを見たくない」という視聴者は多く、シリアス展開の調理法は朝ドラにおいての注目ポイントのひとつとなっています。 『まんぷく』の場合は、ヒロインにとって大切な大切な「咲姉ちゃん」(内田有紀)が病死してしまったり、愛する萬平さんが無実の罪で逮捕されて留置場で半殺しの目にあったりと、2~3週目のメインストーリーがまるごと暗い話になっていました。  あらすじだけを追うと、歴代の朝ドラの中でも『まんぷく』は序盤からかなり試練が多いのです。  一般に、朝ドラの暗い展開に「笑い」を盛り込もうとすると、芸人を大量投入してコテコテの笑いパートを入れる作品も多いのですが、よほど上手に調理しないと、笑いパートが作品から浮き上がってしまいます。  でも、『まんぷく』はそのような笑いの取り入れ方をしませんでした。  また、これみよがしに話題狙いの週替わり有名人ゲストを投入するという近年の朝ドラによくあるパターンも、現時点では投入していません。これが実に見やすいのです。

『まんぷく』の「お笑い担当」たち。橋本マナミも巻き込まれ…

 では『まんぷく』は、シリアス展開の中にどのように「笑い」を取り入れたのでしょうか。  最初に「笑い」を支え続けてくれたのは、福子のホテルの料理人「缶詰の野呂さん」(藤山扇治郎。福子に片思いして、いつも贅沢な缶詰をくれる)と、咲姉ちゃんに交際を申し込みに来た「白馬に乗った金持ち歯医者の牧さん」(浜野謙太。まんまるメガメでなぜか白馬に乗って現れる)
 しかし、いよいよ咲姉ちゃんの病状が悪化して入院してからはシリアス度が増し、「お笑い担当」の二人の荷が重くなるなあ…と思いきや、福子が勤務するホテルで二人を遭遇させ、「歯医者さん+缶詰」のコラボという別ステージの盛り上がりに移行してきます。  点と点が、線になりました。そして、咲姉ちゃんに失恋した歯医者さんと、福子に失恋した缶詰さんが今度はなぜか同時に、福子のホテルの先輩・「美人だけどモテなかった」恵さん(橋本マナミ)にアプローチを始めます。  ここでいよいよ、本来笑い担当じゃなかった美人・橋本マナミまで巻き込み、笑いパートは線から立体になってきました(結局、恵さんは白馬の歯医者と結婚)。  輪唱から合唱に変わった感じでもあります。さらに、萬平さんが逮捕されてしまうと、その「お笑い楽団」に、福子の親友二人まで加わり、大合唱の大賑わいに。
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ちょっぴり卑怯な「世良くん」=桐谷健太
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