『まんぷく』の、がめつい世良さん=桐谷健太とよく似た朝ドラキャラとは
放映中のNHK朝ドラ『まんぷく』と、『ゲゲゲの女房』(2010年上半期の朝ドラ)は似ている――。前回の記事で、その共通点について書きました。
松下奈緒、松坂慶子という主要キャストがかぶっていたり、実在の人物をモデルとして夫を支える妻がヒロインという点などが共通していますが、もう一つ、重要なキャラがよく似ています。
ちなみに、浦木に対して茂は「イタチ」と呼び、「懲りない、反省しない、努力しない。昔からそういうヤツだ」と言います。その茂に対し、浦木はあっけらかんと「ええでないの、それが通れば、人生楽園よ」と言ってのけるのです。
この遠慮のなさには、腐れ縁、悪友の雰囲気があります。
一方、お人好しの萬平は、世良さんをまさかの「友人」と呼び、疑おうとしません。
関係性はちょっと違うものの、浦木と世良さんの共通点は、金に汚くズルく卑怯なのに、ヒロイン夫妻が、つい笑って許してしまうところ。
ねずみ男ナシに『ゲゲゲの鬼太郎』は成立しなかったように、浦木ナシの『ゲゲゲの女房』もありえません。
そしておそらく世良さんなしの『まんぷく』もありえないのでしょう。
―NHK朝ドラ『まんぷく』レビュー―
<文/田幸和歌子>
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世良さんと、『ゲゲゲ』の浦木=杉浦太陽は似ている
それは、『まんぷく』の世良さん(桐谷健太)。 お調子者で神出鬼没で押しが強く、悪く言えばお金に汚い、よく言えばたくましいキャラ。第7週(11月12~17日)では、萬平(長谷川博己)らが必死に作った塩を、世良さんは専売公社に売りに行くふりをして、大半を闇屋に流してお金をふところに入れていたのです。 この世良さんのキャラに既視感があるなあとずっと気になっていたのですが、それは『ゲゲゲの女房』で杉浦太陽が演じていた浦木克夫でした。 『ゲゲゲの女房』は漫画家・水木しげるをモデルとした茂(向井理)と、その妻(松下奈緒)の物語です。そして浦木は、茂の同郷の友人で、「ねずみ男をモデルとした人物」。「いつも抜け目なく立ち回っては金もうけをしようと考えている」キャラでした。 浦木は、「漫画出版プロデューサー」「広告代理店オーナー」などを名乗り、怪しげな儲け話を持ち込んできては、状況が悪くなると逃げ出してしまいます。茂に「疫病神」と呼ばれていました。 と思ったら、『まんぷく』の世良さんも11月14日放送分で、とうとう「語り」の芦田愛菜ちゃんにハキハキと明るく「疫病神」呼ばわりされていましたね。塩を売ったお金をせしめていたことがバレた回です。 浦木は、茂の母・イカルに「うさん臭い」と思われ、こっぴどく叱られたことからイカルを苦手としていました。 世良さんも、福子の母・鈴さん(松坂慶子)にうさん臭がられています。 にもかかわらず、お人好しの萬平・福子夫妻はともかく、鈴さんまでが世良さんにだまされてしまっていたわけですが……。
世良さんや浦木なしでは、物語が成立しない
田幸和歌子
ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など。Twitter:@takowakatendon