トミヤマ:オシャレ修行を経て、コンサバだけどつまらなくないと思える格好はだんだんできるようになってきたと思うんですけど、そこに大人の女の色気みたいなものを加えるにはどうしたらいいんでしょうか。色気の出し方わからない……。そもそも、色気を服で出すことってできるんですか?
MB:僕は、色気についてはトム・フォードの説明が一番しっくりくるなと思っているんです。「スーツをビシッと着ることではなく、スーツをビシッと着て、そのあとネクタイを緩めることが色気なんだ」って。カッチリと守られたファッションのなかにちょっとの隙を見せる。女性だったら、やたら肌を見せるんじゃなくて、抜き襟で首や背中を少し見せるなんていうのは流行っていますよね。

「カッチリしたなかにある隙が色気につながる」(MB)
トミヤマ:確かに抜き襟は、露出度が高いわけではないのに、色っぽく見えますね。ちょっと花魁っぽい感じもある(笑)。
MB:試着室で服を着た後に、服を着なれていない人ってそのまま棒立ちになるんですけど、オシャレな人って、必ずなんか微調整するんですよ。
トミヤマ:する! 裾まくったり、ボタン外したり、インしたり、なんかちょこちょこやりますよね!
MB:そうやって着崩すことで、ちょうどいい抜け感、色気が出るんじゃないかなと思います。
トミヤマ:ファッション素人って、買った服をそのまま着たらスタイルが完成すると思っているけど、そうじゃないんですね。私がいままで好んで着ていた奇抜なデザインのトンチキ服は、コンサバ服と違って既に崩れているようなもんだから、何もしなくてもそれなりに見えるんですよ(笑)。だから、着崩すというのがわからなかった。コンサバ服に挑戦し始めてから着崩しの大切さを学びました。そうか、それが色気に繋がるんですね。今後もオシャレ修行を積めばきっと色気が手に入ると信じてがんばります!
MB:『40歳までにオシャレになりたい!』は、掲載されている写真もすごくよかったです。姿見がないからスーパーのトイレで自撮りをするんだけど、結果おばちゃんが写りこんでしまった……という写真を本に掲載しているのがスゴイ(笑)。
トミヤマ:結局姿見はまだ買えていないので、姿見を買うポイントを教えてほしいです! というか、ちょうどいいサイズ感でワンルームに置けるような姿見をMBさんがプロデュースしたら絶対売れますよ!
MB:幅が広すぎると後ろが写りこんじゃうから自撮りには不向きとか、キャリーがついていると鏡が床から浮いているから足が短く見えるとか、いくつかポイントはあるんですよ。洋服屋さんの姿見は少し斜めになっていたりと、ちゃんと格好よく見えるように計算されていますし。何より、インテリアとしても部屋になじんで、その鏡の前に立ったときにテンションが上がるっていうのは大事ですよね。
トミヤマ:なんかすごくカネのにおいがする……!(笑)。ぜひプロデュースして、儲かったら私にも1枚ください!
●トミヤマユキコ
ライター、早稲田大学文化構想学部助教。著書に、大のパンケーキ好きが高じて著したガイド本
『パンケーキ・ノート』(リトルモア)、
『大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ』(左右社、清田隆之と共著)など。いとうせいこうと星野概念の対談本
『ラブという薬』(リトルモア)では構成を担当。大学では少女マンガ、サブカルチャーについての講義を担当
●MB
ファッションバイヤー、ブロガー。メンズファッションの底上げを図るべく各メディアで執筆中。“買って着て書いて”一人三役をこなす。主な著書に
『最速でおしゃれに見せる方法』、
『幸服論』(ともに小社刊)。企画協力したマンガ
『服を着るならこんなふうに』(KADOKAWA、漫画・紺野やえ)シリーズはベストセラーに
<取材・文/牧野早菜生 撮影/福本邦洋>