トミヤマ:「オシャレになった私を見て!」ではなくて、みんな私の屍を乗り越えてオシャレになって! という気持ちなんです。オシャレの人体実験というか。もともとが研究者なので、試行錯誤の後に理論化していく作業が好きなんですよ。
「グレーのパーカーは若さと勢いで着るもの。大人っぽく着たいなら1枚で着てはダメ!」っていうのも、大量のファッション誌でパーカーのコーディネートをチェックした後に導き出された結論なんですけど、ファッション誌にはそんなことひと言も書いてないんです。でも、POPEYEとか見ると、シティボーイはみんなパーカーの下にシャツを着たり、コートを羽織ったり、うまく重ね着していて。その「言葉では書かれていないが重要な情報」をキャッチできたときは快感です。
「試行錯誤して理論化していく作業が好き」(トミヤマ)
MB:トミヤマさんは研究者ならではのアプローチで法則を導き出しているけど、オシャレ素人が写真メインのファッション誌を見てルールを理論化していくのってすごく難しいですよね。
トミヤマ:わたしの研究は「質より量」なので、みなさんも量をこなせばきっとできるようになるんですけど、まあやらないですよね普通(笑)。MBさんの本は、最初は「むちゃくちゃ文字が多いファッションの本って不思議だな」って思ったんですが、理論の本だから頭に残る。右も左もわからない素人に文字情報で基本ルールを教えてくれるのがすごいと思いました。
MB:ナチュラルボーンオシャレの人なら、ファッション誌の写真を見るだけで無意識にルールがわかるけど、ほとんどの人はいったん言語化したほうがわかりやすいんですよ。
トミヤマ:そうやってファッションのリテラシーを高めてから改めてファッション誌を読めば、入ってくる情報量も格段に増えますよね。自分が理屈の人間だから、理論が先にあると応用しやすいなと思います。
MB:そういう意味では、オタクの人って言うのは、ファッションの世界と相性がいいと思っているんですよ。細かく追及するのが好きな人たちが、ファッションの理論を学べば一気にオシャレになるんじゃないかなって。オシャレに興味のない人たちが多いと思うけど、本質的にはオシャレに向いている。
トミヤマ:オタクって、服になるべくカネを使いたくないじゃないですか。私も、10万する洋服を買うならそのカネでマンガを買いたいって思ってしまうからよくわかるんです。
でも、MB理論だったら、ユニクロやファストファッションを活用して、かなり安い費用でオシャレになれるから、理論的という意味でも、おカネを使わないという意味でもうまくハマりそうですね。今まで服に興味のなかった男性のオタクたちが、MB理論でどんどんオシャレになっていったらおもしろい。
ジャニヲタの女子って、コンサートは「推しとのデート」という感覚だから、めいっぱいオシャレしていくんですよ。一方、女性アイドルの握手会にオシャレしていく男性ってそんなにいないような。男性にも「アイドルに会いに行くときはばっちりオシャレしていこう」という文化が広まっていったら素敵だと思います。