日本の「セクシー」は他人目線。プラダが表現する自分のためのセクシーって?
【モードをリアルに着る! Vol.66/小林直子】
「セクシー」という形容詞は西洋の衣服を形容する時によく使われる言葉です。
脚の付け根ぎりぎりのミニスカートや10センチ以上もあろうかというピンヒール、背中がばっくりあいたドレスなどに対して「セクシー」という形容詞がしばしば用いられますし、多くの人がそんな衣服が「セクシーな服」であると考えていることと思います。
しかし「セクシーな衣服」とは、そんな単純なものではありません。
ユマ・サーマン、ナオミ・キャンベル、クロエ・セヴィニーを迎え、クラシックな雰囲気のホテルのロビーで行われたミュウミュウの2019年リゾートコレクションについて、ミウッチャ・プラダは「セクシー」であると語りました。
ミウッチャ・プラダが表現する「セクシー」とはどんなものでしょうか。
ファッションにおいて「セクシー」や「センシュアル」という形容詞を使うとき、それは単に他人に対して「性的である」という意味だけではなく、着る人自身が自分に感じる性的魅力であり、官能です。
そしてミウッチャ・プラダがここで強く訴えるのは、「あなた自身のためのセクシー」とも言うべき「セクシー」です。
日本では多くの人が服を選ぶとき、肌触りよりも見た目を重視します。少しぐらいの着にくさ、肌に当たる違和感は無視して、他人の視線優先で服を選んでいます。
「愛され」という言葉からもわかるように、自分が愛するのではなく、他人から愛されるために選ぶという人も多いでしょう。「セクシー」についても同様で、日本では「誰か自分以外の人のためのセクシー」の話ばかりが聞こえてきます。
2019年のミュウミュウのリゾートコレクションにならって、私たちも私たち自身にとってのセクシーについて考えてみましょう。
自分が何を着たら官能的と感じるか、セクシーと感じるかは人それぞれ違います。
シルクの肌触りが好きな人もいれば、洗いたてのコットンシャツのパリッとした感触を最も好む人もいるでしょう。肌を露出して空気に直接さらすほうがより官能的な気分を味わえる人もいれば、羽衣(はごろも)のような薄い布を肌にまとっていたほうが、よりセクシーであると感じる人もいるでしょう。
プラダが表現する「セクシー」とは
アレクサ・チャンが着るこのルックはミウッチャ・プラダの言う「セクシー」にあふれています。羽根飾りのついたシルクプリントのパジャマパンツにシースルーのタートルネック、ゆったりとしたローゲージのカーディガンに華奢なサンダル。 肌の過度な露出も短いスカートもありません。けれどもこれがミウッチャ・プラダの言うところの「セクシー」です。 それは他人の視線にさらされた「セクシー」ではなく、あくまで自分のための、内側から感じる「セクシー」なのです。
着る人自身の感覚に訴えるのがセンシュアルな衣服
センシュアル、つまり官能的という表現もファッションではよく使われます。 ファッションでセンシュアルというときにすぐに思い浮かぶのは、シルクやカシミヤといった肌触りのいい素材です。滑らかなその肌触りを持つ素材や、そんな素材を使った衣服を表現するのにセンシュアルという形容詞がよく使われます。 センシュアルな衣服もまた、他人の視線にではなく、あくまで着る人自身の感覚に訴えるものです。
着る人自身が自分に感じる性的魅力、官能こそ「セクシー」
身体に触れる冷たく滑らかなシルクの感覚、ふんわり優しく肌をなでる羽毛、ホテルの毛足の長いじゅうたんに深く沈むサンダルのヒール、暖かく身体を包み込むざっくりと編まれたカーディガンなど、これらはすべて着る人自身の感覚に訴えるもの。 ミウッチャ・プラダはこれらセクシーな感覚を自分に感じることを許すことにより、私たちはもっと楽しく、自由に感じられるようになると言っています。
日本では「誰か自分以外の人のためのセクシー」ばかり
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