「3日目はさすがに今日で1度、間を置こうと話し合いました。その日は帰りが深夜になってしまったんですが、帰ると夫がリビングでうたた寝していた。
テーブルの上には、私の大好きなケーキがありました。
ぎくっとしましたね。その日、結婚記念日だったのをすっかり忘れていた。夫は目を覚ますと、『お帰り-。お疲れさま』って笑ったんです。『
少しお腹減ってるでしょ。そんな顔してる』って食事も用意してくれて」
罪悪感とは違う、何か新しい感情がマチコさんの心の奥からあふれ出てきた。
情熱はいつか冷める。だけど、この人の愛情はずっと流れ続けているのだと芯から納得したのだという。
「彼と3日続けてホテルへ行って、もちろん快感は強かったけど、その快感が何につながるんだろうという一種の虚しさも抱いていたんですよ。ものすごく身勝手なのはわかっているけど、夫のその日の言動を見て、
私がきちんと向き合ってもっと関係を深めていかなければいけないのはこの人だとよくわかったんです」
倦怠期という言葉で、夫との関係を深めようとしなかったのは自分にも責任があると痛感したのだという。
「彼も同じように感じたんじゃないかな。翌日から何も言わなかったけど、お互いにごく普通の関係にすっと戻れたんです。憑きものが落ちたみたいに」
あれから1年たったが、夫とは時間の許す限り会話をし、寄り添ってきた。
夫があの時期のことをどう思っているのかは怖くて聞けない。もちろん、夫も聞こうとはしない。
「一緒に暮らしていると、つい配偶者のことは何でもわかったような気になるけど、そんなことはないんですよね。お互いに日々、考え方も変わるし。部活に夢中な娘が、『なんだか最近、やけに仲良くない?』とニヤニヤしながらからかってくるんですが、私、今になってようやく夫に恋をしているような気がします」
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夫婦再生物語 Vol.2―
<文/亀山早苗>
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