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「夫婦別姓」はなぜ選べない?結婚で姓が変わり苦しむ人たちの実情

 近年、議論が続くもいまだに法改正が実現していない「選択的夫婦別姓」 問題。そんななか、地方議会に法改正を求める陳情・請願(*1)を提出することで国会での議論を促し、少しでも早く「夫婦同姓も夫婦別姓も選べる社会」を実現しようとする動きが広まっていることをご存知ですか?
夫婦

写真はイメージです(以下同じ)

 この活動を呼びかけているのは、有志でつくられた「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」。現在、北海道から沖縄まで約70人のメンバーが集まっているそうです。

法律で夫婦同姓マストの国は、世界で日本だけ

 事務局長の井田奈穂さんはこう話します。 「あらゆる国が男女同権の考えに基づき法改正をしたいま、夫婦同姓を法律で義務付けている国は世界中で日本だけ。国連からも再三、改善勧告を受けています。昨年2月公表の世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成の国民が反対の国民を大幅に上回りました。また、未婚男性31%、未婚女性の27%が『結婚するなら別姓にしたい』と答えた調査も(*2)。ここまでニーズがあるものを反映しないのは、大いに疑問です」
選択的夫婦別姓・全国陳情アクション

「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」トップページより

「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」のメンバーは30~50代女性がメインでしたが、最近は男性も増えてきたそう。昨年、サイボウズ株式会社の代表取締役・青野慶久氏が選択的夫婦別姓を求めて国を提訴したことが話題になりましたが、男女ともにさまざまな改姓の不利益に悩まされているのが現状のようです。  では、改姓によって具体的にどんな不利益が生じることがあるのでしょうか。一例として井田さんのケースをうかがいました。

自分の姓で結婚を望んでも、“家”がそれを許さない

●井田奈穂さん(43歳・会社員)  結婚→離婚→再婚を経験している井田さん。初婚で改姓し、離婚後も元夫姓を名乗り再婚で現夫の姓に改姓したため、戸籍上これまでに2度、改姓していることになります。 「初婚時、私は自分の姓で結婚したいと望みましたが、元夫からは『妻の名前になるなんて恥ずかしい』と一蹴され、両家の両親からは『結婚は家と家との結びつき』などと強く説得されたため、我慢して改姓。自分ではない名前で呼ばれ続ける苦痛を初めて味わい、自己同一性を失ったと感じました。  初婚の19年間、義両親は家制度が存続しているかのように私を“本家長男の嫁”として扱いました。たとえば義父が亡くなった際は、告別式後に夫が仕事に戻ったにもかかわらず、私は『嫁だから』と仕事を休んで義父の初七日、納骨まで担うことを強いられたのです。改姓していなければ、“○○家の嫁”という意識がこれほど生じなかったのでは?離婚 それでも、「婚氏続称(*3)」の手続きをして離婚後も元夫の姓を名乗り続けたのは、仕事において元夫姓で実績を積んでいたから。さらに、2人の子どもが「自分の名前を変えたくない」と望んだことも、大きな理由だといいます。
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2度目の改姓後、事態はさらに複雑化して……
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