そんな夫と暮らす日常はどういうものだったのだろうか。
「夫は
毎日のように弁護士とのやりとりを私に知らせるんです。今日はこんなことがあった、相手も弁護士をたてたようだ、弁護士同士はこんな話し合いをしているそうだ、と。それを聞くのがつらかったですね。私の日常は、いつもと変わりなかったし、子どもたちには何も知らせていませんでしたから、子どもの前で沈んだ顔は見せられない」
夜はいちばん下の4歳になる次女とともに子ども部屋で寝た。夫とふたりきりの寝室にはどうしても入ることができなかったという。
「夫が怖かったわけではないんです。ただ、夫といると、自分がいけないことをしたんだと精神的に追い込まれていく。
夫はふっと『あの男とは感じたわけ?』と急に言ったりするんです。私が悪いんだということをひたすら刻み込もうとしている夫には、嫌悪感を覚えていました」
夫は自分を愛しているのではなく、「自分のもの」が奪われたことに怒りを覚えている、プライドが踏みにじられたことで執着していると彼女は感じていた。
「夫とは結局、お互いの心の内に入り込むような深い会話はできませんでした」
何度か夫と話し合おうとしたことはある。だが
夫は心を開いてくれなかった。
「もしあなたがやり直そうと思っているなら、お互いに気持ちを正直に話したほうがいいと思う」
彼女がそう言っても、「どうせオレはおまえにとって“男”ではないんだろ」と拗ねてみたり、「あの男はおまえをどうやってイカせたんだ」とゲスな発言をしたりするだけ。しまいには彼女も話し合うことそのものをあきらめた。