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わが子の発達障害を受け入れることで、広がった“あったかい世界”

この保育園じゃなかったらどうなってただろう

 その後、ぽんちゃんの補助についてくれたのは、30代の男の先生だった。ぽんちゃんはとても力があって、体力がある。男の先生にしてくれたのは本当に正解だった。  みんなが静かにお勉強をするようなときにじっとしていられないぽんちゃんを、大好きなバスを見せにお散歩をしてくれた。運動会ではみんなとは一緒のことができないかわりに、見せ場をつくってくれたり、大好きな音楽ではカスタネットやマラカスなど、出来る限り参加させてくれたのだ。 いつもニコニコしていたぽんちゃん おかげで、どんな行事も、どんなお勉強の時も、ぽんちゃんはいつもニコニコしていた。そして、そのすぐ近くに、いつもその先生がいてくれた。  さらにお友だちにも恵まれ、なぜか周りには“ぽんちゃんのお世話をしたい”という将来ダメ男にひっかかるであろう予備軍の女子たちが出現した。よって、ぽんちゃんはいつもうわばきを履かせてもらっていたのだ。当時の女子たちよ、どうかダメ男には引っかからないでほしい。  卒業式の日、その男の先生は、真っ赤な目でぽんちゃんを見送ってくれた。私も、あふれる涙を抑えきれなかった。この保育園じゃなかったら、この先生がついてくれなかったら、ぽんちゃんはどうなっていただろう。そんなことを考えるくらい、ありがたかった。  あれから3年。保育園の前を通るたび、教室に指をさすぽんちゃん。たまに遊びに行くと、正規雇用となったその男の先生がぽんちゃんと本当にうれしそうに遊んでくれる。そして、そのほかの先生たちも、ぽんちゃんを言葉通りちやほやしてくれるのだ。本当に、ありがたいし、本当に、あたたかい。  ぽんちゃんを私と一緒に、いや、私以上に6年間育ててくれたこの保育園を、私はずっと、忘れない。3つ子の魂百まで。それならきっと、ぽんちゃんはいい心の持ち主になれたはずだ。 <文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【登場人物の紹介】 登場人物の紹介息子・ぽんちゃん(8歳):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者 娘・みいちゃん(10歳):しっかり者でおませな小学5年生。イケメンの判断が非常に厳しい。 ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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